東京都緊急治安対策本部が6日に開いた第3回「万引き防止協議会」で、少年の万引きを店が発見した場合はすべて警察と保護者に連絡し、学校が判明したときは学校にも性別や学年を連絡することを盛り込んだ「少年の万引き防止の行動計画」を決めた。8月1日から実施される。 |
行政と警察、学校、店などが万引き対策で共同歩調をとるのは異例である。現在は各店に対応が任されていて、万引きした少年に2度としないよう説諭したり、商品を買い取ってもらったりするだけで済ませるケースもあったが、万引き防止のためには毅然とした態度で臨むことが必要と判断したのである。 |
行動計画は「万引きを繰り返させない仕組みづくり」として、店と警察、学校、保護者の連携を重視し、店から連絡を受けた学校と警察の対応として、保護者に子供同伴で店へ謝罪に行くよう働き掛けることも盛り込んでいる。 |
万引きしにくい店づくりや学校での万引き防止教育、万引きした商品の売買防止でも関係機関、団体が協力し、万引きを発見するため集団で店内を必要以上にうろついたり、大型バッグを持って周囲を気にしたりするなど不審な行動を見つけた場合は「積極的に声を掛ける」としている。 |
成果を大いに期待したい。だが、しかし、はたして上手くいくだろうか。 |
少年が万引きしたと現認したとき、そのときの対応の仕方は十分だろうか。熟練した保安員が現認し、その保安員が対応するなら大丈夫だろうが、店員がたまたま現認して、たまたま声をかけたとき、はたしてトラブルなく対応することが出来るだろうか。 |
このように思うのは、店員に対するイザというときの指導・教育が行われているか、はなはだ疑問に感じているからである。 |
万引きを現認したとき、そのときの声かけほど難しいものはない。挙動不審者に“いらっしゃいませ”とか、“何をお探しでしょうか…”などという声かけとはわけが違う。 |
万引きを見つかったと動揺した少年が、おとなしく従うだろうか。声をかけた店員を見て、“これは敵わない”と直感したら、おとなしく従うだろうが、少年にそのように思わせる店員がどれほどいるだろうか。 |
買物に行く店を思い浮かべてもらいたい。“つよそう!”な店員を見ることがあっただろうか。もしも、そのような店員がいたとき、それはそれで心配になる。 |
強制的に強引に事務所に連れて行こうとしたとき、少年の思わぬ抵抗にあったり、少年がとっさに逃げ出して、車に轢かれたりして新聞ネタになり、少年でなく店の方が悪いイメージをもたれてしまうことがある。 |
仮に強引に事務所に連れてきたとき、「過剰防衛」「監禁」などで万引き犯に訴えられることはないだろうか。 |
万引き防止装置のゲートが不正持ち出しを感知してアラームを鳴らしたとき、そのときの声かけと、その後の対応について、店員に十分に指導・教育している店がどれほどあるだろうか。皆無に近い状態ではないだろうか。 |
何も知らないまま声をかけ、相手が逃げ出したので追いかけて、反対に刃物で切られたり‥といった事件が起きてしまうことが往々にしてある。 |
ある大手出版社の防犯対策委員会がアンケート調査したところ、「相手から暴力を受けたことはありますか」という問いに対して、回答のあった137店のうち、32.9%にあたる45店が「ある」と答えている。「ある」と答えたなかには、ナイフ・ペンチなどの凶器を使われたとか、首を絞められた、店の駐車場で待ち伏せされ暴行にあったというケースもあったという。 |
同じアンケート調査で、「万引きの犯人が逃走したばあい、追跡したことがありますか」という問いに、回答のあった138店のうち、じつに88.4%にあたる122店が「ある」と答えている。あぶないといわざるを得ない。 |
「少年の万引き防止の行動計画」は結構だが、問題は各論である。 |
接客マナーの心得もあまりなさそうな店員さえ多く見かける今、通常の正しい接客マナーを心得た声かけの仕方、万引きを現認したときの声かけの仕方、“その後”の対応についてのきめの細かい指導・教育こそ、先ずは行うべきではないだろうか。 |
(by 佐藤 伸) |