東京都では、子どもを犯罪に巻き込まないための緊急提言を受け、昨年12月に万引き防止協議会を設立した。協議会には、書店やコンビニエンスストアなどの販売店、書籍やCDなどの製造・卸売業者、防犯機器メーカー、学校関係者、商店街組合、弁護士会、警視庁などが参加している。 |
協議会では、万引きは犯罪であるとの認識を強めるとともに、万引き防止に向けての情報交換や解決に向けての連携強化を図り、「一致協力して万引きを許さない社会」、「子どもを犯罪に巻き込まない社会」の仕組み作りを目指している。 |
とくに、「万引きは大きな犯罪への入り口です」として、少年の万引き問題を大きく取り上げている。これは近年、都内において少年によって引き起こされる犯罪、とりわけ凶悪犯罪の検挙件数が依然として増加を続けているからである。 |
強盗や殺人など重大な犯罪に手を染めてしまった少年の中には、万引きや自転車盗・オートバイ盗など、比較的軽微な犯罪を繰り返したうえで、重大な事件を引き起こしてしまうといった例が見られるという。軽微な犯罪の代表格が万引きだという。 |
軽微な犯罪を繰り返すうちに罪悪感が麻痺し、やがて重大な犯罪につながっていくことが少なくないという。 |
軽微な犯罪の段階からきちんと指導し、子どもたちを犯罪に巻き込まないための方策を実行に移していくことが、待ったなしの課題となっているとしている。 |
警視庁管内で平成14年に万引きにより検挙・補導された人数は6,296人で、そのうち35%にあたる2,201人が少年となっている(内訳:大人4,095、小学生119、中学生656、高校生950、大学生96、その他91、有職少年54、無職少年235)。年齢別で見ると全体の7割以上が中学生と高校生で占められています。 |
これらの数に加えて、店頭での厳重注意、始末書などに留まっている数を合わせると、実際にはこの10~20倍以上もの万引きによる被害があるといわれている。 |
はじめは文具類やマンガ本などの低価格で小さなものから始まり、口紅などの化粧品や写真集など、やや高額のものを対象とするようになっていく傾向がみられるという。 |
子どもたちの中には「皆やっていることだしバレなきゃいいじゃん」「見つかったらお金を払って反省しているふりをすればいいんでしょ」などと面白半分やゲーム感覚で万引を行う者が多いことも否めない。 |
最近の万引きの手口は、一層巧妙化しているといわれており、始めから万引きを目的に店に入り込む例が見受けられるという。 |
コミック本などを大量に万引きし、古本などを買い取る店に売って利益を得るという悪質なものも増えている。最近では特に、CDやDVDなど換金率が高く、隠してもかさばらない商品を狙っての万引きも見られるようになっているという。 |
こうした万引きによる被害は、スーパーやコンビニエンスストアなど様々な業種において問題となっている。 |
これまで店側としても、保安員による巡回を強化したり、監視カメラや万引き防止装置などの防犯機器を設置するなどして個別の努力をみせてきているが、残念ながら大きな成果を得られていないのが実情である。 |
こうした状況に対して、万引きによる被害が著しい書店商業組合では、昨年12月から万引き防止のキャンペーンを展開し取り組みを強化している。 |
ポスターを掲示して万引きは犯罪であることを改めて周知したり、声かけにより万引きを未然に防ぐなど、書店の自主的な努力によって万引き防止に努め、あまりにも悪質な場合には、損害賠償請求を検討することも含め、厳しい対応で臨んでいる。 |
6日に開かれた万引き防止協議会では、少年の万引きを店が発見した場合はすべて警察と保護者に連絡し、学校が判明したときは学校にも性別や学年を連絡することを盛り込んだ「少年の万引き防止の行動計画」を決めた。8月1日から実施する。 |
行政と警察、学校、店などが万引き対策で共同歩調をとるのは異例である。現在は各店に対応が任されていて、万引きした少年に2度としないよう説諭したり、商品を買い取ってもらったりするだけで済ませるケースもあったが、万引き防止のためには毅然とした態度で臨むことが必要と判断したもの。 |
行動計画は「万引きを繰り返させない仕組みづくり」として、店と警察、学校、保護者の連携を重視し、店から連絡を受けた学校と警察の対応として、保護者に子供同伴で店へ謝罪に行くよう働き掛けることも盛り込んでいる。 |
万引きしにくい店づくりや学校での万引き防止教育、万引きした商品の売買防止でも関係機関、団体が協力し、万引きを発見するため集団で店内を必要以上にうろついたり、大型バッグを持って周囲を気にしたりするなど不審な行動を見つけた場合は「積極的に声を掛ける」としている。 |
こういった動きの中で、監視カメラや万引き防止装置などを店側に売り込んでいるメーカー・販売会社の対応は、どうだろうか。正直に言って、ハードである装置を売りつけるだけで、一番肝心なハート、つまり理念とかお客である店側に対しての本当の思いやりがない。だから、彼ら監視カメラや万引き防止装置などのメーカー・販売会社は、万引きに関わる諸問題についての情報・知識を持ち合わせていない。 |
万引きの件数、被害額、手口、挙動不審とは、万引き犯を捕まえることが出来る条件、捕まえた時どうするかなどなど自信持って店側を指導・提案することが出来る営業マンがいるだろうか。会社側は彼らを指導・教育しているだろうか。ノー!だろう。 いまや、万引き防止対策については、監視カメラや万引き防止装置などのメーカー・販売会社の営業マンよりも、店側の方が知識・情報を持っている。彼ら以上に、じつは万引き犯の方が知識・情報を持っている。 |
6日の万引き防止協議会では「万引き被害実態調査アンケート結果」も発表されたが、これをみると、監視カメラの導入数309件で、効果ありとしたもの176件で、56.9%しか効果があったとみていない。万引き防止装置の導入数は307件で、効果ありとしたもの221件で、71.9%しか効果があったとみていない。 |
監視カメラや万引き防止装置などのメーカー・販売会社はいまこそ、「効果実証」を明らかにするべきである。でたらめな効果データなど口するべきでない。「こう使えば、こういう効果ががる」ことを知らしめるべきである。監視カメラや万引き防止装置などのメーカー・販売会社は、現在までの営業姿勢を悔い改めて「ハートを持ってハードを売り」、店側が満足し、万引き犯が尻尾を巻く「オペレーション・サービス」を実施すべきである。 |
22日に行う『第1回・佐藤セキュリティ塾』では、テーマの中に、店側が満足し、万引き犯が尻尾を巻く「オペレーション・サービス」を追加することにした。先着13名しか聞けないが…。 |
(by 佐藤 伸) |