Secure-japan
header


診断
犯罪事例
セキュリティ情報
このサイトについて
  

コンビニこそ「破れ窓」/メーカー・販売業者、フランチャイズ本部にも責任
by ウェリカジャパン・営業本部長 佐藤 伸

有名な言葉(理論)がある。「破れ窓理論」である。セキュリティ業界に携わる人で、この言葉を知らないという人は、サッサと他の業界に転職した方がいい。知っていても実行しない人は、頭を丸めて出直せばいい。国民年金未払い7閣僚は言い訳ばかりで、頭も丸めず、制度の欠陥是正に動こうともしない。立法府に身を置いている価値がない。
「破れ窓理論(Broken Windows Theory)」とは、地域住民の安心感と警察への親近感を醸成することを目的として警察官の徒歩によるパトロールを実施した米国ニュージャージー州の取組みをきっかけとして、1982年に米国で提唱された理論である。
この理論は、従来では軽微な犯罪とされていた行為(公共空間での落書き、酔っ払い、物乞いなど)であっても、それがコミュニティの利益を大きく侵害するものであるならば、警察やコミュニティは真剣に考え、対策を講じなければならないとするものである。例えば、窓ガラスの損壊は、軽微な事犯であり、初犯であることも多いため、厳しい処罰がなされることはあまりないが、壊れた窓が放置されていれば、そのビルには管理が行き届いていないことが明らかになる。
他人の管理下にない財産はいたずらや犯罪の格好の餌食になり、瞬く間にビル全体、さらに地域全体が崩壊していく。「破れ窓」とは崩壊するコミュニティの比喩であり、破れ窓理論は、こうした悪循環に陥る前に警察とコミュニティが適切な対策を講じるべきだと主張するものである(平成14年版警察白書から)。
もっと具体的にいえば、シカゴとともに最悪の犯罪都市といわれたニューヨークを“最高に安全な大都市”といわれるまでに急速に治安を回復させたジュリアーニ市長が招聘しニューヨーク市警コミッショナーに就任したウィリアム・ブラットン氏が実行したのが「破れ窓理論」である。この理論は、ラスベガスと並んでカジノで有名な都市で発行されている「アトランティック・マンスリー」誌が1982年に提唱したもので、ジェームス・ウィルソン氏、ジョージ・ケリング氏の両氏が唱えた。
じつは、ニューヨーク市警コミッショナーに就任したウィリアム・ブラットン氏は、ニューヨーク地下鉄警察長時代に「破れ窓理論」を実行し、悪名高かったニューヨークの地下鉄の無賃乗車を取り締った。無賃乗車を見つける者、連行する者、事後処理をする者と、それぞれ専従者を決め、流れ作業的に行うほど、それはそれは徹底したものだった。それだけ目に余るものだったわけだが…。徹底的に取り締った結果、ナイフや拳銃などを見つけることも出来た。
そのウィリアム・ブラットン氏がニューヨークを大清掃した結果、1980年代に一人歩きもままらなかったニューヨークが1994年以降8年間で凶悪犯罪が60%以上も減ったのである。この傾向はウィリアム・ブラットン氏が任を離れた後、今なお続き、“セプテンバー・イレブン”後の警備強化とあいまって、ニューヨークは人口100万超の大都市で犯罪発生率最下位と全米一安全な都市となっている。
昨年12月に公表された米連邦捜査局(FBI)のまとめによると、同年前半の人口比の犯罪発生率は人口10万人以上の200都市のうち197位。市当局は人口100万人以上の都市では2年連続の最下位だと喜んでいる。殺人や強姦(ごうかん)、強盗などの凶悪犯罪発生率は前年同期に比べて7.4ポイントも下がっている。
もっとも、ニューヨークは人口約800万人という大都市だけに同年前半の6ヶ月だけで殺人308件、強姦758件、強盗約1万1,800件、住居侵入盗と窃盗計約7万800件が起きているというのも現実である。この米連邦捜査局(FBI)のまとめによる犯罪率の記事は下記のホームページをご覧になると詳しいことがわかる。
http://www.cnn.com/2003/LAW/10/28/ny.crime.stats/
ところで、わが国の犯罪状況だが、昨年1年間における刑法犯の認知件数は279万136件、検挙件数は64万8,319件、検挙人員は37万9,602人、検挙率は23.2%だった。前年に比べ、認知件数は減り(2.2%減)、検挙件数は増え(9.4%増)、検挙人員も増え(9.2%)、検挙率は2.4ポイント向上した。重要犯罪(殺人、強盗、放火、強姦、略取・誘拐、強制わいせつ)をはじめ、自動車盗や路上強盗、侵入強盗、住居侵入などは増えている。
身近な存在であるコンビニエンスストアを含めた深夜営業している店舗を対象にした強盗事件は、ここ10年間では平成10年から急増し、平成14年にはいったん減少に転じたが、平成15年には認知件数は742件で、前年に比べ274件(58.5%)も増加している。推移をみると、平成6年184件、7年115件、8年146件、9年137件、10年308件、11年340件、12年394件、13年527件、14年468件、15年742件という具合である。検挙率は、平成6年には60.9%だったが、15年は34.9%である。
本サイト「セキュアジャパン」の最新犯罪事例でも事件を報道しているが、とにかくコンビニがよく狙われている。京都市北区のコンビニで2月11日、刃物を持った男が脅し文句を書いたメモを見せ、現金約20万円を奪う強盗事件が発生している。群馬県伊勢崎市では、同じコンビニが3回も襲われ計26万円も奪われている(1回目は昨年12月29日、2回目は今年1月26日、3回目は3月24日)。
警察庁は、強盗に襲われる多さに平成11年10月7日にコンビニなど深夜営業している店舗に防犯基準を示して、これを実行するよう要請したが、その主な点は
(1)深夜時間帯(午前0時~午前7時)は複数人による勤務とする、
(2)レジ内の現金を概ね3万円以下とする、
(3)駐車場など店舗周辺に向けた防犯カメラの設置に努める-の3点。
しかし、いっこうに守られることがなく、そのためにさらに昨年12月11日には釣り銭に使うことがない1万円はレジに入れずに金庫に保管することなどを追加して再要請した。
しかし、それでも、いっこうに守られる気配はなく、襲われては大金が盗られている。レジ内に大金があるからである。これでは「コンビニが破れ窓である」といっても許されるだろう。防犯機器を売るメーカーや販売業者、店舗を指導・管理するフランチャイズ本部には、破れ窓を繕う責任の一端があるのに、それをしないでいるのは、どういう神経なのだろうか。
防犯機器を売るメーカーや販売業者、店舗を指導・管理するフランチャイズ本部などは、「破れ窓理論・店舗バージョン」として、小さな安全安心ミスも見逃すことなく、積極的に指導・啓もうを行い、店舗が犯罪の温床とならないように努めるとともに、「破れ窓理論」の柱でもある地域の人と一緒に犯罪のない「安全・安心な街づくり」を目指すべきではないか。
先に“未納3閣僚”が明らかになった時に、「顔を洗って出直して来い、スットコドッコイ」と批判した民主党幹部がいたが、これからも防犯基準が守れないコンビニや指導・啓もうも出来ない防犯機器を売るメーカーや販売業者、店舗を指導・管理するフランチャイズ本部がいたら、同じように「顔を洗って出直して来い、スットコドッコイ」といいたい。
footer