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商店街などに設置される監視カメラの法的根拠は
◇屋外に設置される監視カメラのプライバシー・肖像権問題
昨年、長崎市で起きた幼稚園児誘拐殺人事件をきっかけに、もの凄い勢いで、アチコチの商店街が監視カメラを設置するようになった。これまでの監視カメラはパチンコ店、コンビニ、銀行など屋内が中心だったが、商店街に設置されるのは屋外である。
監視カメラは、プライバシー・肖像権問題とは切っても切れない関係にある。だからといって、この問題に監視カメラのメーカーや販売業者が敏感かというと、必ずしもそうではない。むしろ鈍感だといってもよいだろう。筆者は、安全のために私権がある程度制限されるのは諒という立場だが、現在の商店街など街頭に監視カメラが野放図に設置されることには首を傾げてしまう。
パチンコ店、コンビニ、銀行などの監視カメラは、設置されている場所の所有権者がはっきりしており、監視カメラが嫌なら行かなければよいのだが、商店街や街頭となると話が違ってくる。商店街といっても、土地の所有権を商店街が占めているということではあるまい。商店が集まっているから商店街となっているに過ぎまい。商店街自体の所有権者がはっきりし、その所有権者が自己の権利として監視カメラを設置するのであれば、それはよい。しかし、所有権者でない者が監視カメラを設置し、万一の時に、警察に映像という情報を提供するのはいかがなものだろうか。
◇プライバシー・肖像権問題から逃げるな
商店街などに設置される監視カメラは、多くは“安全を守るために”という大義名分のもとに行われているが、設置・運用基準はバラバラであり、明文化されてないところもあるようだ。設置・運用基準がキチンとしていなければ、安全を守るという役目を果たせない。
プライバシー・肖像権問題があるから映像を録画しないというケースが結構多い。録画していないところはモニタリングもしていないようだ。モニタリングもしない録画もしないというのでは、ダミーカメラではないか。ダミーカメラで安全が守られるほど世の中甘くない。
日本は、どうしてその場その場の目先だけで事を措置しようというのだろうか。日本国憲法を改めないで特措法特措法で誤魔化しているが、公共空間に監視カメラを設置する場合、設置・運用について国としての法的な規程・基準を設け、それに従うことを定めるべきではないか。商店街組合とか自治体がアヤフヤな形の運用マニュアルをつくり、役に立たない監視カメラであっては安全は守れない。
警察が商店街などを動かす形で、商店街が監視カメラを設置するケースが多いが、このような姑息なやり方をする警察はいかがなものか。必要なら、国としての法的根拠に基づいて、警察は堂々と設置・運用すべきである。
◇監視カメラとプライバシー・肖像権問題の判例
監視カメラとプライバシー・肖像権問題について知る人ぞ知る判例がある。大阪府警は66年に大阪市西成区あいりん地区(釜ヶ崎)に監視カメラ2台を設置、83年までに計15台に増やした。これに対し周辺の住民ら12人が大阪府に対し撤去を求める訴えを大阪地裁に起こした。大阪府側は、監視カメラの目的は事件の捜査ではなく犯罪を防止するためであり、録画をしていないので“監視カメラは警察官が通常のパトロールなどで公道の通行人をみているのと同じ”だと主張した。
94年4月の判決で、“犯罪予防の段階は、一般に公共の安全を害する恐れも比較的少なく、録画する必要も少ないのであって、このような場合に無限定に録画を許したのでは、右自由を保障した趣旨を没却し、特段の事情のない限り、犯罪予防目的での録画は許されない。これらの行為が行われれば原告らの肖像権を侵害したものとして違法とされる”とし、解放会館斜め前の監視カメラについて“解放会館の玄関が見え、その出入の状態が手に取るように観察でき、会館前に出された立て看板の文字なども読み取れる”と監視行為と認定、15台のうちの解放会館斜め前の1台について“結社の自由や団結権に深刻な影響を与えるだけでなくプライバシーの利益をも侵害する。監視体制が維持されている以上、実際に監視が為されているか否かにかかわらず不安感を与え続けることになり、行動を抑制する点で同じ効果がある”として撤去を命じた。残り14台については、映像は録画していないという大阪府側の主張を認める形で違法ではないとした。14台はいまも稼動している。
大阪地裁の判決前の69年12月に最高裁大法廷は京都府学連デモ判決で、憲法13条に基づき個人の私生活上の自由の一つとして“何人も承諾なしに、みだりにその容貌、姿態を撮影されない自由を有する”とし、例外として“現に犯罪が行われ、もしくは行われたのち間がないと認められる場合であって、しかも証拠保全の必要性および緊急性があり、かつその撮影が一般的に許容される限度を超えない相当な方法をもって行われるとき”とした。
いま各地の商店街などに設置されたり準備が進んでいるものについて、訴えが起こされたら、どういう結果になるだろうか。それ以上に問題なのは、判例に基づいて監視カメラを設置したとき、防犯効果のある正しい運用ができるのだろうか…。
(佐藤 伸)


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