警察幹部や教師など想像も出来ない立場の人による犯罪が相次いでいる。高校生どころか、中学生以下による凶悪事件も相次いで起きている。わが国は、今や犯罪大国といってよい。どうして、こうなってしまったのだろうか。今回の総選挙では“安全”も1つのテーマになった。 |
犯罪を防ぐには「破れ窓理論」(Broken Windows Theory)の実践が大事だと言われるようになり、それに基づいて地域住民が防犯パトロールや声掛け運動を始めたところもあるが、大方は、まだまだ他人の被害には見て見ぬ振りをしているのではないだろうか。ドロボーと大声を出したとき、いったい誰が助けてくれるのだろうか。 |
“見て見ぬ振り”も日本人の個性の一つかもしれない。“他人事には無干渉”がまかり通っているが、これはドロボーにとっては有り難い風潮だろう。親が子に注意する、先生が生徒に注意する、近所のオジサンおばさんが近所の子に注意する-といった光景は、すでに日本から消えてしまった。日本の治安を回復するには、まず“見て見ぬ振り”“他人事には無干渉”を止めることが一番である。何かをしたら他人から注意されると思ったら、あまり悪いことは出来ないに違いない。 |
警察庁は、今年を「治安回復元年」と位置づけ、街頭犯罪の取り締まりなどを強めている。政府は10月、全省庁が参加する犯罪対策閣僚会議を発足させた。各政党も、今回の総選挙で治安対策を政権公約に掲げ、警察官の増員、空き交番解消などを約束している。それだけ治安が悪化している何よりの証拠である。 |
鍵掛けなど不要だった田舎でも、凶悪犯に襲われる時代である。政党は警察官の増員、空き交番解消などを訴えているが、もともと警察官も交番も少ない田には心に響くものがない。警察官の増員、空き交番解消などよりも、“見て見ぬ振り”“他人事には無干渉”を止める「困った人を見たら声を掛ける」ことの重要さを市民一人一人の胸に植え付ける教育のほうが大事である。 |
青森県十和田市内で10月27日、学校から帰る途中の中学1年の女子生徒が車で連れ去られそうになった事件で、20歳の若者が略取未遂、傷害の疑いで逮捕された。この事件では、一緒にいた友人が女子生徒の足にしがみつき、連れ去られるのを防いだ。友人がいなかったら、と思うとゾッとする。幸い、被害者は一人でなく助ける人がそばにいた。子供を守るためには2人以上で登・下校する、不審な場面を目撃したら注意する第三者の目と勇気がいかに大切であるかがわかる。一緒にいた友人は、本当に勇気のある心からの友だった。おそらく、怖かったと思うが、友を思う気持が神々しいまでに強かったのだと思う。 |
“見て見ぬ振り”“他人事には無干渉”を止めるとともに、不審者が出没したら、警察や学校が家庭に素早く情報を伝えることが大事である。一部ですでに行われているが、一人歩きが危険な暗い場所を調べ出し、地図にして配ることも大事である。とにかく警察、学校、家庭、地域が連携して対応することがきわめて大事である。 |
連携が成功するためには、2つの重大な条件がある。これがなければ、連携はできないし、連携のきっかけも生まれない。それは「信頼」であり「自衛心」である。「自衛心」とは、他に必要以上に甘えない自立の心である。 |
警察は市民を信頼しているか。市民は警察を信頼しているか。警察は権力を楯にしていないか。市民は奉仕を求めすぎていないか。警察、学校、家庭、地域すべての関係がギクシャクしていないか。市民は警察を頼りにし、事件を解決して欲しいと願って情報を寄せる。警察は信頼に応えて捜査に全力を尽くす。こういう信頼関係を強めていきたいものである。警察、学校、家庭、地域すべての関係がこうなって欲しいと望みたい。 |
しかし、市民を犯罪から守る防波堤のはずの警察で不祥事が続けば市民の協力は得られない。子供を教育する親や先生が不祥事を起こしては、子供はソッポを向いてしまう。これでは世の中は良くならない。治安は回復しない。わが国の治安を一日も早く回復させるために、警察、学校、家庭、地域すべての関係が「信頼」の2文字で強く結ばれて欲しいものである。 |