9月20日に自民党総裁選の投開票が行われ小泉総裁(首相)が再選を果たしたが、これに立候補した高村正彦・元外相は「「犯罪」からの安心、「治安の危機」を克服、組織犯罪対策の強化をアピールした。このような日本の首相を決めるといっても良い自民党総裁選の争点の一つに、このようなアピールは初めてだと伝えたマスコミがあった。珍しいことだったに違いないが、日本の治安、安心がそれだけ壊れてしまっているのである。これを受けたのか9月26日に招集された第157相は、所信表明演説の中で、「国民の安全と安心の確保」を強調した。 |
この個所を紹介すれば次のとおりである。 『国民の安全と安心の確保は、政府の基本的な責務です。「世界一安全な国、日本」の復活を実現します。警察官を増員し、全国で「空き交番ゼロ」を目指します。市民と地域が一体となった、地域社会の安全を守る取り組みを進めます。補導活動を強化して非行防止に努め、少年犯罪を減らします。外国人犯罪に対し、出入国管理体制や密輸・密航の取り締まりを強化します。犯罪被害者の人権を尊重した捜査や裁判の実現を目指しす。』 |
所信表明演説を読んでも胸に響く感動がない。総裁選を争った高村元外相のスローガンを奪ったとしか思えない。所信表明演説のこの個所は、空疎なものでしかなく、これでは日本の安全は良くなると思えない。なぜか?かつて世界一安全と言われ“安全神話”が世界中に知られていたのにもにもかかわらず、今のような情けない状況になってしまったことへの原因分析と反省がまるでない。具体的な目標が示されていない。具体的配慮がない。こういうことで日本の安全神話は壊れてしまった、このままでは1,2年のうちにさらにこうなってしまう、だから何年までにこういう事をして、検挙率をここまで高めると明言すべきである。演説では、我われ自身の未来の姿が見えてこない。 |
“警察官を増やす”とある。大都市圏の首長らが共同して国に警察官の増員を求めて動いたが、これまでに政府がこのことをやろうとしたことがあっただろうか-。“市民と地域が一体となった、地域社会の安全を守る取り組みを進めます”とある。確かに今、地域が一体となって一般市民が巡回パトロールを行うことが全国的に多くなったが、これらを政府から動いたことがあっただろうか-。政府が動かないから、住民が自ら行動を起こす。 |
身近に自分の身が心配になった市民や会社が自発的に始め、それが報じられて、運動が広がっていったのではなかったのか。 |
例えばである。首都の治安対策強化のため、石原慎太郎知事が打ち出した都職員を1,000人規模で警視庁に派遣する構想について、都と警視庁は9月25日に派遣職員を低年齢化や凶悪化が問題になっている少年非行の防止対策や交通行政事務に充てる方針を固めた。都と警視庁は、年内に人数や配置場所など具体的な内容を詰めることにしている。これは9月25日の都議会で公明党の代表質問に答えたものである。 |
少年非行は、犯罪の凶悪化が問題化している上、加害者と犯罪に巻き込まれる被害者の低年齢化が目立っているとして、都は警察官と都職員がチームで繁華街をパトロールすることなどを検討している。派遣職員の業務をめぐっては、都と警視庁の協議で、当初は警官が不在になりがちな「空き交番」に配置する案も出たが、都は警察業務の経験や逮捕権限がない職員の交番業務は危険として見送った。政府は、「空き交番ゼロ」を本当に実現させるのだろうか。 |
大阪では、女性による女性のための防犯隊「ミナミセーフサポートレディース」が結成された。大阪・ミナミで相次いでいるひったくりの被害をなくそうと、女性による女性のための防犯組織が結成されたのである。 |
大阪府内では、今年に入って今までに5,400件を超えるひったくりが発生している。「ミナミセーフサポートレディース」は、ひったくりの被害に遭う女性が多いことから、ミナミで働く女性ら18人が防犯の啓発活動を行い、地元商店街、警察とのパイプ役を担う目的で参加したもの。メンバーの1人は「私も2回ひったくりにあっている。安心して女が1人で歩ける街を目指したい」と話している。ミナミセーフサポートレディースは、街頭活動を行うほか、ミナミで働く女性へ同じ立場から注意を呼びかけていきたいとしています。10月11日からの全国地域安全運動週間に合わせて活動をするという。 |
広島市中区の舟入地区や周辺では深夜、女性を狙った通り魔事件が相次いでいる。9月9日夜は西十日市町で発生し、6月以降5件目となった。現場一帯の住民たちは10日、早速夜間パトロール隊を結成し、自主的な防犯活動に乗り出した。 |
9日午後10時15分頃、中区西十日市町の歩道で、自転車に乗った男が、歩いて帰宅していた西区の会社員女性の後頭部を瓶のようなもので殴って逃げた。女性にけがはなかったが、同様の手口による事件は午後9時から11時の間に集中して発生した。相次ぐ通り魔事件を受けて、中区の神崎学区では10日夜、住民たちが集会所に集まりパトロール隊を結成に動いたのである。 |
話し合いに続いて、メンバーが懐中電灯を手に地域を回り、帰宅中の女性に注意を促したり、街路灯の消えている路地を点検したりした。中心メンバーの自営業、74歳の道田功さんは「住民に不安が広がっている。近隣の防犯パトロール隊と声をかけ合い、みんなで安全な街を取り戻したい」と話している。市民の方が強いのである。 |
検挙率をみると唖然としてしまう。今年1月~7月間の窃盗犯の検挙率は17.8%である。手口別でみると、乗り物盗は7.7%(自動車盗17.1%、オートバイ盗7.5%、自転車盗6.4%)、車上ねらい11.7%、資材置き場荒し10.0%、工事場荒し8.7%、玄関荒し6.8%、自動販売機荒し15.9%、店舗荒し14.1%といった具合である。検挙率の高いのはCD盗60.4%、万引き72.6%ぐらいである。CD盗、万引きの検挙率が高いのは、EAS(電子式商品管理装置/万引き防止装置)と店内保安員の目に見つかった容疑者を警察に届出た結果に他ならない。警察力の成果とはいえない。その他の手口は20%~35%程度の検挙率である。これでは、まさに犯罪天国である。 |
来日外国人による犯罪が増え続け社会問題化しており、“外国人犯罪に対し、出入国管理体制や密輸・密航の取り締まりを強化します”というが、出入国管理体制や密輸・密航の取り締まり強化だけで来日外国人による犯罪が減るものではない。言葉の問題で現場の警察が困っているのが現状ではないか。これらは、国際問題、外交問題になるが、海外からの犯罪者増加に対して、強く問題提起ができる体制が政府にあるのだろうか? |
もはや官の警察力だけで犯罪を抑止するわけにはいかないだろう。民、つまり警備会社を活用することが一つの案だが、現実には5分間で済ます犯罪に対して機械警備システムは、もはや現状に合っていない。センサーが発報しガードマンが現場に出動し、状況を確認してから110番通報しても後の祭りである。泥棒は逃げ去った後である。警察官を増やしても、それだけで犯罪が減る、検挙率が上がるという保証はない。具体的指針・対策-これこそ必要である。 |