セキュリティ業界からも規模の小さい、いわゆるベンチャー企業といわれるなかから次の段階にダッシュしようとする元気の良いところが見られる。特徴のある強い商品を持ち、巨象に立ち向かっている。3年先4年先の上場も視野にいれているベンチャーが両手に近い。そのうえ、さらに伸びるために新しいことを実行しようとしている。代表的なことがユニークな方法による次代を担ってもらうための人材育成プランであり確保プランである。 |
人材確保ではバブルの時代には“青田刈り”が行われてきた。青田刈りでは卒業前にいわゆる“ツバを付けて”他社に行かせないようにしてきたが、いま、あるベンチャーが行おうというのは、自社の経営事業計画に合わせて、大学出身者や予定者をアメリカのセキュリティ学部を持っている大学に留学させて、“セキュリティとな何か、何をすることがセキュリティなのか”を専門に勉強させて、その人たちに将来のセキュリティ事業の中心を担ってもらおうというものである。 |
これを実行しようとアメリカの大学をサーチしているが、こういうことを考えた理由は、日本では新卒者を入社させても自社ではセキュリティ事業の総合的な“セキュリティとは何か、何をすることがセキュリティなのか”を教えることが出来ない、国内にそのような教育を委託できる機関がないためということである。セキュリティ商品の売り方などは、経験則から教えることはできるが、それでは従来と同じで、セキュリティ事業全般の経営について幅広い視野を持つことは出来ず、それでは上場後の更なる発展は期待出来ないとしている。 |
今の段階でも、セキュリティ担当部署がある外資系企業とビジネスをしようとした場合、セキュリティに関しての考え方がかみ合わず、というよりもレベルが違いすぎて相手にされず、逆に国内企業や官公署などとビジネスをしようとすると相手のレベルが低すぎて、相手を説得しようと心掛けても説得できるだけの知識がなく、結局は大手に価格で負けてしまうという悪循環にあるという。 |
たしかに、そうだと思う。日本の大学を出た新卒者でセキュリティについて学んできた者はいない。セキュリティ学部・セキュリティ学科を持った大学がないからである。会社に入り官公署に入り警察に入り警備会社などに入ってから自己流で、自社の業種・レベルに合わせて単なる商品知識を持つに至るに過ぎない。セキュリティといえば警察、警備会社が一般にはイメージされるだろうが、警察は捕まえることに腕を磨き、全般的なセキュリティ実践理論については、どうだろうか。十分だとは思えない。警備会社にしても、同じである。機械警備が主体の警備会社であっても、同じようなものである、といえるだろう。 |
お隣りの韓国にもセキュリティ学部を持つ大学はあるが、日本では恐らく警察や文部科学省が抵抗勢力となって、まだまだ大学がセキュリティ学部を持つには数十年は掛かるかもしれない。それなら、アメリカの大学に送り込んで専門にセキュリティを学ばせ、将来を担わせたほうが賢明である。 |
このような斬新な考えを実行しようとしているベンチャー企業がある一方、代わりに大手企業がまるで元気がない。CCTV業界で超大手と自他共に認めていた企業がシェアを大幅に落したと評判になっている。逆にシェアを伸ばしているのが、最近まで危ない企業として取り沙汰されていたメーカー。直販部隊を持ち、自らの足を使っている。 |
代理店営業が中心の、これまでの世界的に知られた日本の営業スタイル、つまりケイレツ(系列)代理店中心にしていたり、系列ではないが大手企業などに営業を随せているところは押しなべて元気がない。その理由として、長年にわたって任せてきたために、営業推進・商品開発などの企業経営の柱の部署が極めて弱体化して、現在のような混乱の時代を生き延びるためのアイデアが出てこない。まさに大企業病にドップリと浸かってしまっている。茹蛙である。自分の会社が、あるいは自分が茹蛙かどうか、見つめてはどうか。(佐藤 伸) |