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悲しい事件を追風に商店街に設置進むか監視カメラデジタルレコーダーの鮮明な映像に防犯効果を期待
   長崎市で起きた12歳の男子中学1年生による4歳の園児連れ去り殺害事件が、悲しいことに屋外、とくに商店街に監視カメラを設置する動きを後押しするに違いない。すでに新聞、テレビの報道によって、殺された4歳園児が連れ去られた家電量販店と投げ捨てられた立体駐車場には監視カメラはあったもののカメラ映像は録画されておらず、その非常識ぶりが呆れられた。
   間もなく警察の捜査によって、立体駐車場近くの浜市商店連合会が6月に設置 した監視カメラに、殺された4歳園児と連れ立って歩く12歳の中学1年生の姿が鮮明に録画されていることがわかり、これが犯人を“補導”する決め手となったことがわかった。テレビの報道画面に犯人の姿が映し出されることはなかったが、殺された男児の顔や通りの鮮明なカメラ映像は写され、いままでの映像とは違うことを印象づけた。
監視カメラシステムの進歩をうかがわせるのに充分だった。カメラメーカー各社はいま、このことを“追風”として商店街への売込みに本腰を入れ始めた。
   警察は、昨年から“歩いて暮らせる街づくり”のために屋外に「スーパー防犯灯」(街頭緊急通報システム)の設置をはじめ、現在までに国の助成により(一部は単独)、全国で27地区342台のスーパー防犯灯が設置されている。この動きとは別に、犯罪が多発することによって客離れが起きはじめた商店街のなかには、監視カメラを設置するようになってきた。
この動きが、長崎市で起きた事件によって、犯罪捜査に役立つことから防犯に効果があるという意識になり、本腰を入れ始めた監視カメラメーカーの商店街への売込みとあいまって、商店街をはじめ、様々な屋外に防犯を目的に監視カメラが普及するきっかけになると思われるからである。
   監視カメラメーカーが本腰を入れるのには、もう一つのわけがある。それは監視カメラそのものは値崩れによって、利益があげにくくなっているが、カメラ映像を録画する装置が、テープを使うタイムラプスVTRから、まだまだ高価で利益のでるハードディスクに録画するデジタルレコーダーへと替わり、すでに監視カメラが設置されているコンビニエンスストアや金融機関に録画装置の入れ替えがアピールできるからである。
   監視カメラが屋外に設置されるようになるまで、長い道なりがある。“屋外”を代表する商店街に監視カメラが設置された最初は、昭和53年4月に設置された東京・吉祥寺近鉄裏ピンク街(武蔵野市吉祥寺1丁目)のはずである。平成12年3月にオーバーホールされたが、監視カメラ4台、モニター3台が設置されている。交番で24時間モニターしている。商店街に設置された第2号は、平成9年7月の横浜市元町商店街である。監視カメラ18台、モニター19台が設置された。しかし、吉祥寺近鉄裏ピンク街とは異なり、モニターは商店街事務局に設置されているが、モニタリングはしていない。第3号は、平成10年4月の愛媛県松山市大街道商店街、第4号は、同年8月の栃木県宇都宮市オリオン通り商店街である。
   じつは、監視カメラが“公認”されるには、昭和41年に設置された大阪市西成区あいりん地区の監視カメラが大きな障害となっていた。裁判でプライバシー侵害か否かが争われ、監視カメラ1台を撤去を命じた大阪地裁判決があったためである。
一部マスコミも、監視カメラについては、プライバシー侵害の疑いと大きく報じてきた。今回の長崎市で起きた事件は、罪に問えない子供がいたずら目的で子供を誘い、挙句の果てに立体駐車場の上から丸裸にして投げ捨てるというショッキングは事件であることから、監視カメラについてプライバシー侵害を取り上げていないのは、喜ばしいことである。
   これまで監視カメラが普及するために、幾多の哀しいエポックメーキングな事件が起きてきた。後世まで記憶に残るような事件が起きるたびに、事件が起きた分野で監視カメラが起きたのである。日本人は、セキュリティ問題については「人の振り見て我が身を直す」ということはなかった。また、他人の行為を参考に、自分の行いを正すことを意味する「他山の石とする」という言葉があるが、他人の行為を参考に、自分の行いを正すことはなかなか出来ないことを国民性としている。街に出れば、他山の石となる人が大勢いる。とくに夏の今、シャツのボタンを2つも3つも外して乳房を半分以上見せたり、へそ下数センチまで見せている良識ある人は思えない人々々ばかりである。これで性犯罪が起きないのはおかしい。起きて当然といわねばならない。
   セキュリティというより、防犯について日本人は何故、他山の石、人の振り見て我が身を直すということをしないのだろうか。防災については、神経を使っているのに、おかしなことである。
防災面では、日本は厳しい法規制・対策が取られている。それでも、厳しくなったのは、昭和47年5月13日に起きた大阪千日デパートビル火災、翌年11月29日に起きた熊本市の大洋デパート火災からである。大阪千日デパートビル火災では死者118名、大洋デパート火災では103名の死者が出た。このことをきっかけに防犯対策は国ベースで厳しい法規制が行われてきた。
   しかし、防犯面では、恐らく死者の数によると思われるが、防犯対策について国ベースで法規制が行われることは無い。数年前からピッキングによる侵入盗が激増し、これによって5月28日に「特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律」(通称ピッキング新法)が成立し、ピッキング用具やドライバー、バールなどを正当な理由がなく持つことを禁じるようになったが、これなどは珍しい出来事である。
   スーパーやデパートなどが監視カメラを設置し始めたのは、今は当時の勢いはみられないが、昭和59年3月18日夜に江崎グリコ社長宅に3人組が押入り、入浴中の社長を拉致して現金10億円と金塊100Kgを要求する営利誘拐事件が起きてからである。21日に社長が自力で脱出した後も犯人は“かい人21面相”と名乗って執拗に脅迫し続け、5月10日にはグリコ製品に青酸を入れたという通告があったことから大騒ぎになった。6月になって犯人からグリコには終息宣言が出されたが、今度は森永製菓が10月から翌年2月まで脅迫され、スーパーやデパート、コンビニエンスストアなどに青酸ソーダの入ったお菓子が置かれるという新事態が起きた。この一連の事件が有名な、「グリコ・森永事件-かい人21面相事件」である。
この事件では死者こそでなかったが、これをきっかけに、多くのスーパーやデパートに監視カメラが設置されるようになった。しかし、犯人は捕まらないまま迷宮入りとなってしまった。
   コンビニエンスストアに監視カメラが設置されるようになったのは、平成4年5月1日未明に東京都江東区の亀戸ローソン1丁目店で1人で店番をしていた18歳の男子高校生アルバイト店員が強盗に殺された事件がきっかけとなった。
この事件の前にも、覆面をしてコンビニエンスストアを襲う強盗事件が新聞紙面を賑わし、昭和60年12月30日には東京都大田区蒲田で、アルバイト店員が強盗を追いかけて殺されるという事件が起きている。
それでもコンビニエンスストアに監視カメラが普及するきっかけとなったのは、亀戸ローソン1丁目店で18歳の高校生アルバイト店員が強盗に殺される事件まで待たねばならなかった。監視カメラの取付工事がお盆時期と重なり、有力だった大手監視カメラメーカーが夏休みを理由に工事を断り、急きょ新興の業者が工事をして急場をしのいだ。当時の、大手カメラメーカーのコンビニエンスストア市場に対する思いなどその程度だった。
   ついでに言えば、銀行に監視カメラが広く設置するようになったのは、昭和54年1月26日に当時の三菱銀行北畠支店(大阪市住吉区)で起きた猟銃強盗・梅川事件がきっかけだった。この事件の前にも昭和30年8月29日に2人が射殺された大阪東海銀行ピストル強盗事件が起きたが、三菱銀行北畠支店(大阪市住吉区)で起きた猟銃強盗・梅川事件を待つまで監視カメラは、ほとんど設置されなかった。
   猟銃強盗・梅川事件が、銀行が監視カメラを広く設置するきっかけとなったのは、事件があまりにも悲惨きわまりなかったからである。押入った犯人梅川昭美(36)が最初、行員1人と駆けつけた警官2人を射殺、その後、並べた人質の前で支店長を射殺、行員1人の肩を撃ち、別の行員の片耳をナイフで殺ぎ落とし、男子行員は下半身を裸にし、女子行員は全裸にするなどソドムの市を思わせる惨劇が繰り広げられたのである。関係者の口は、いまなお重い。
   監視カメラが普及する道程には、気が重くなる事件が連なっているのである。一つの事件をきっかけにして、それこそ他山の石として、いっせいに監視カメラを設置すれば、犯罪をいくらかでも防ぐできたのに…と、日本人の性(さが)を考えさせられてしまう。
また、日本人が良くないのは、本質を無視して、恰好だけすることである。監視には何の役にも立たないダミーカメラを並べたり、平成7年7月30日に東京都八王子市のスーパーの2階の事務室で事務の女性とアルバイトの女子高生2人が頭を撃たれて殺される事件が起きたが、監視カメラが設置されていながら、閉店と同時に監視カメラの電源は切られてしまっていた。“夜には何も起きないから”がその理由だった。
今回も、4歳の男児が連れ去られた家電量販店には最新の監視カメラシステムを設置していながら、デジタルレコーダーに録画をしていなかった。何のための監視カメラか?監視カメラとはどういうものか?ということがわかっていない。業者が、何も教えないで設置しているのである。
   平成11年4月26日の昼前、BBC(英国放送協会)の人気キャスターだったジル・ダンドーさんが、ロンドンの自宅玄関前の上がり段で撃たれ死亡するという事件が起きたが、それから1週間ほど経ってから、事件が起きる45分ぐらい前に彼女がショッピングセンターに入ったところの映像が公開された。
ショッピングセンターに設置してあった監視カメラが彼女を撮影し、録画をしていたのである。公開された映像は、彼女がEAS(電子式商品監視装置/万引き防止装置のこと)の間を通って店内に入ったところのシーンで、彼女の顔や全身を鮮明に録画していた。ロンドンの多くの店舗は、このように来店客をすべて録画しているのである。
   浜市商店連合会の監視カメラは、これと似た使い方をしていて犯人の“補導”に多大の貢献をしたが、これから設置しようとする全国の多くの商店街、それだけでなく、すでに監視カメラを設置済みの店舗は、必ずモニタリングをするか、さもなければ、せめて録画して毎日、再生・チェックすることを習慣づけてもらいたいものである。


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