三菱電機は、このほど監視カメラ映像から人間の顔を正面でも横向きでもリアルタイムで検出し、その動きを追跡して、最も映りのよい瞬間の顔画像を自動的に選択して記録する「ベストショット顔画像記録技術」を開発した。 |
顔の向きや大きさ、明るさなどを総合的に判断して、最も映りの良い顔画像を高速に選択・記録する技術は業界初である。この成果を応用すれば、監視カメラや入退室管理システム、企業や家庭で効率よく訪問者の記録システムを実現することができる。また、顔による個人識別と組み合わせることにより、特定の被写体が移っているシーンだけを抽出するビデオ編集システムなどにも応用することができる。 |
同社が本技術を開発したのは、近年、セキュリティ分野で映像監視のニーズが増大しており、なかでも監視カメラの映像記録装置の普及が拡大しているが、記録効率向上のためには必要な瞬間・部分だけを録画することが必要であり、記録した膨大な映像を再生・分析する際には重要なシーンを高速に検索する必要がある。 |
また、映像監視の対象はほとんどが人間であるため、人間の顔の部分のみを記録・検索することが求められる。画像の中から人間の顔を切り出す技術はこれまでにもあったが、横向きの顔には適用しにくい、処理時間が遅いという問題があった。 |
主な特長は次のとおり。 |
a.. 高速顔検出アルゴリズムで、リアルタイムに画像中から人間の顔を検出 |
人間の顔の特徴を効率よく表現するために、白黒の四角形を組み合わせたレクタングル フィルター*1 を用いた高速顔検出アルゴリズムを開発した。これにより傾いた顔、横向きの顔、複数の顔にも対応して、毎秒20フレーム以上のスピード(従来は毎秒10フレーム程度)で、画像中から人間の顔を検出することができる。 |
なお、開発した高速顔検出アルゴリズムは、個人の属性(性別、年齢)識別、不審者発見、個人認証など、セキュリティ分野における顔認識に共通して利用できる基本技術である。 |
*1 レクタングル フィルター:(Rectangle Filter) 白黒の長方形を組み合わせたもので、たとえば、上下が暗く(黒)、中央部が明るい(白)、帯状のフィルターを用いることにより、顔の中から目と眉の部分を効率よく探すことができる。 |
b.. 「ロバスト高速パターンマッチング」と「ベストショット顔画像選択機能」で、最適な画像を逃さず選択 |
検出した顔を安定して追跡する「ロバスト高速パターンマッチング*2 技術」により、連続して顔を追跡するとともに、追跡された同一人物の顔画像列の中から、顔の向きや明るさ、コントラスト、ぶれなどを考慮しながら、最も記録に適した画像を選択して記録する「ベストショット顔画像選択技術」を開発した。これにより、監視映像として特に重要な意味をもつ人間の顔で、人物特定のために最も映りのよい画像を記録することができるようになった。また、静止画を保存するので動画保存に比べて記録効率を大幅に向上(1万~10万倍)させることができる。 |
*2:パターンマッチング: 予め用意された部分画像(テンプレート)に一致する領域を対象画像の中から見つける技術であるが、照明条件の変化など外部的な要因により精度が低下する。これを防ぐために、テンプレート内の複数の部分領域を、その信頼度に応じて選択して用いることで、変化に頑強(ロバスト)、かつ高速なパターンマッチングを行う技術。 |
同社では今後、映像監視システムへの搭載のために、実際の使用環境に合わせた性能確認を行う。また、本技術をもとに、顔による個人識別や人物の年齢・男女判別などの関連技術の開発を進める。 |