東京高裁(大島隆明裁判長)は11日、1966年に起きた「袴田事件」で死刑が確定し2014年の静岡地裁の再審開始決定で釈放された袴田巌元被告(82)の即時抗告審で地裁決定を取り消し、再審請求を棄却した。
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一方、4年前に静岡地裁が認めた釈放については「本人の年齢や生活状況、健康状態などに照らすと決定が確定する前に取り消すのが相当とは言いがたい」として取り消さなかった。
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弁護側は高裁決定を不服とし最高裁に特別抗告する可能性が高い。
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今後、審理は特別抗告審に移るとみられるが、地裁と高裁の判断が分かれたことで袴田さんの再審開始の可能性は不透明な情勢となった。検察側は高裁の再審開始決定取り消しを受け、袴田さんの再収監の可否について検討する。
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地裁は14年3月、確定判決で犯行時の着衣とされた「5点の衣類」について、「血痕が袴田さんや被害者と一致しない」とする弁護側のDNA型鑑定などを「新証拠」と認めて「後日捏造されたとの疑いを生じさせるもの」と結論づけ再審開始決定を出した。
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同時に地裁は、死刑と拘置の執行を停止する決定も出し、袴田さんは逮捕から約48年ぶりに釈放された。検察側は、地裁決定を不服として即時抗告した。
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即時抗告審の東京高裁は15年12月、地裁で新証拠の一つと認められたDNA型鑑定(筑波大の本田克也教授が実施)の検証を決定。検察側が推薦した鈴木広一・大阪医科大教授に検証を依頼した。
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鈴木氏は昨年6月、本田氏が鑑定で用いた「特別なたんぱく質」が「DNAを分解する成分を含んでいる」などとして、鑑定手法を否定する報告書を高裁に提出。弁護側は「鈴木氏の検証は本田鑑定と同じ器具や手法を用いておらず、高裁から求められた(本田鑑定の)『再現』をしようとしていない」などと反論した。こうした経緯から、対立する2人の専門家の意見を踏まえ高裁がどんな判断をするかが注目された。
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過去の死刑確定事件では、免田(発生は48年)▽財田川(同50年)▽島田(同54年)▽松山(同55年)の4事件で再審無罪が確定している。
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【袴田事件】=1966年6月30日未明、静岡市清水区(当時・清水市)で、みそ製造会社の専務の男性(当時42)方から出火。焼け跡から専務と妻(同39)、次女(同17)、長男(同14)が他殺体で見つかった。元プロボクサーで同社従業員の袴田巌さんが逮捕、起訴され、公判で無罪主張したものの80年に最高裁で死刑が確定。第1次再審請求は2008年に最高裁で再審不開始が確定したが、第2次再審請求に対して静岡地裁が14年に再審開始を決定。検察側が即時抗告し東京高裁が審理していた。
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