東京都は23日、子どもの貧困をめぐる実態調査の結果を発表した。親の年収だけでなく、食生活や学習環境などから「生活困難層」にあたるとする家庭が2割を超えた。調査した首都大学東京の阿部彩教授は「困難層をターゲットにした施策が必要」と話している。
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東京都は、昨年8月から9月にかけて墨田区、豊島区、調布市、日野市に住む小学5年生、中学2年生、高校2年生の子どもがいる家庭、およそ2万世帯を対象に調査を行い、このうち42%から回答を得た。
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調査では、家庭の経済的な困窮について、世帯年収のほか、過去1年で水道や電気など公共料金が支払えなかった経験があったり、子どもを家族旅行や学習塾に行かせることができなかったりした場合は「生活困難層」と定義し結果をまとめました。
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それによると、全体の約20%が「生活困難層」にあたることがわかり、小学5年生がいる家庭では20.5%、中学2年生がいる家庭では21.6%、高校2年生にあたる16歳から17歳がいる家庭では24.0%だった。
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また、「生活困難層」のうち、特に度合いが高い世帯を「困窮層」と定義し、子どもの食生活や学習環境、それに放課後や休日の過ごし方などに影響が見られるとしている。
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具体的には、1日の食事の回数について「2食がほぼ毎日」と回答した高校生は「困窮層」で21.9%で、「一般層」に比べて10ポイントあまり高くなっている。
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また、「欲しいが持っていないもの」を小学生に尋ねたところ、自宅で宿題できる場所と回答したのは「困窮層」で11.9%で、「一般層」より9ポイントあまり高くなっている。
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このほか、経済的な理由でキャンプや海水浴などを体験させることができないと答えた保護者の割合が、「困窮層」では20%台後半から40%台半ばだったのに対し、「一般層」は1%未満と大きな開きが見られた。
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結果について、調査を行った首都大学東京の子ども・若者貧困研究センターの阿部彩センター長は「困窮層の子どもは、生活のあらゆる面で不利な状況に置かれていることが浮き彫りになった。貧困の連鎖を防ぐためにも、子どもだけでなく保護者も含めた早期の支援が求められる」と話している。
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調査では、子どもたちが自分自身や将来をどのように感じているか、「自己肯定感」についても尋ねている。
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年齢別に見ると、小学2年生と中学2年生では、「困窮層」と「一般層」で大きな差はなかったが、高校2年生では自分を否定的に捉える割合が「困窮層」で高くなっている。例えば、「自分は価値のある人間だと思うか」と尋ねたことろ、「そう思わない」と否定した割合は、「一般層」では7.6%だったのに対し、「困窮層」では13.1%だった。
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このほか、保護者の健康や精神状態についても尋ねていて、「困窮層」では肉体的・精神的に負担を感じている割合が高いことがわかった。 このうち健康状態を尋ねたところ、「あまりよくない」、「よくない」と回答した割合は「困窮層」の保護者で20%前後にあがり、「一般層」の5%前後を大きく上回っている。
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また、「困窮層」では、60%前後の保護者が「心理的なストレスを感じている」と回答し、20%前後の保護者がより深刻な状態にあることがわかった。
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