先月1日から京都府警で日本で初めての「予測型犯罪防御システム」の運用が 始まった。使いこなせるだろうか。このシステムは、過去10年に実際に発生した 犯罪や、犯罪未遂の事案や不審者の情報などをデータ化して犯罪傾向を分析 して、事件の発生日時や地域などを予測し、地図に表示するという。
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警察が収集する犯罪データが、実際に起きているすべての犯罪を網羅している だろうか。警察がもっているデータは通報または警察に認知された犯罪だけで はないだろうか。通報されない犯罪は少なくない。被害者も110番をするかしない かをいろいろな事情で躊躇する。
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悪質ないじめといった傷害事案や暴行事件なども、死亡事件などになって初め て発覚する。つまり、大事に至らないと通報されないことも少なくない。起きた事 件から“次も”とたしかに思いたくなる事件もある。過去に「すき家」が襲われた 事件や今も続くコンビニ強盗である。
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「すき家」は1人勤務状態を止めてから事件が大幅に減った。しかし今も襲う人 がいる。これはどういう条件下の人だろうか。警察はそれを詰めているだろうか。 コンビニは今も襲われている。1人勤務の店が多いが、そうでない場合もある。 何故だろうか。
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今、米国で最も危険な都市のひとつだといわれるシカゴでは、犯罪を犯しそうな 人や犯罪の被害者になりそうな人を予測するシステムを導入している。前歴や ギャングなどとの関係といった情報から割り出すようだ。当局の人が、実際にシ ステムでリストアップされた人たちの自宅を訪問して、名前がはじき出されたこと を伝え、警告を与えたりするという。
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つまり、当局が「近い将来、あなたは人を撃ち殺す可能性がある。監視してるか らな」と、起きるかどうかわからない犯罪を忠告するのである。この方が「予測型 犯罪防御システム」としては一枚上の気がする。
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日本の「交番」は今、世界的にも認められているが、残念ながら交番に今、寄る 人はいるだろうか、警察官が足を使って近所を警らしているだろうか。“足”がミニ パトカーに代わって注意を呼びかけているが、スピーカーの調子も悪く、よく聞き 取れない。しかも個人宅の情報が得られるとは思えない。
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犯罪の源流、犯罪を防ぐ基本をわかっているだろうか。警察は起きた事件のお およそのデータは持っているが、事件を起こしそうな人のデータは持ち合わせて いないと思う。「予測型犯罪防御システム」でひったくりや痴漢などが起きやすい 場所や時間帯などを推測することなどは可能だろう。しかし、これらの犯罪はこ のシステムに頼らないでも可能である。万引き防止も同じである。
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人を見る眼を養うのが一番。社会を見る眼を養うのが一番。店舗に人を見る眼 があるだろうか。人を見る眼と社会を見る眼が「予測型犯罪防御システム」にな ることを知ってもらいたい。 (by 佐藤 伸 セキュリティ事業部)
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