東京地方裁判所立川支部(阿部浩巳裁判長)は14日、東京都内の家電量販店で2013(平成25)年9月にゲームソフトなどを万引きした罪に問われた男性に対し、「男性は当時、痙攣(けいれん)を伴わない癲癇(てんかん)の発作が続く症状によって心神喪失の状態だった」と指摘して無罪を言い渡した。
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この裁判は、13年9月、都内の家電量販店でゲームソフトやヘッドホンなどを万引きしたとして都内に住む50代の男性が盗みの罪で起訴されたもの。裁判では、裁判所が選任した医師による鑑定で、男性には痙攣を伴わない癲癇の発作が続く「NCSE」と呼ばれる症状があり、当時発作が起きて意識障害が起きていた可能性が高いとされ、弁護側は心神喪失の状態だったとして、無罪を主張していた。これに対し検察側は、懲役1年10ヶ月を求刑していた。
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判決で阿部裁判長は「男性は鑑定の内容通り、当時、意識が朦朧(もうろう)として自分の行動を制御できず、心神喪失の状態だった」などと指摘して男性に無罪を言い渡した。
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「NCSE」は痙攣を伴わないため一見、発作が起きていることがわかりにくい特徴があるが、発作が起きると物事を認知する機能の低下や意識障害などが表れるという。「NCSE」に詳しい「国際医療福祉大学熱海病院」の永山正雄医師は「『NCSE』についてあまり知られておらず、裁判で争われたケースをこれまでに聞いたことがない」と話している。
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無罪判決を言い渡された50代の男性、「当時は宙に浮いて意識が朦朧としている状態で、防犯カメラの画像を見て初めて自分の行為を思い出しました。店に迷惑をかけたことは間違いないので、これからしっかりと治療して社会復帰をしたいと思います」と話した。
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男性の弁護を担当した林大悟弁護士は「これまであまり知られてなかった『NCSE』という症状について、裁判所が認めたので画期的な判決だと思います。男性が治療に専念するためにも検察は控訴しないで欲しいと思います」と話した。
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東京地方検察庁立川支部の名倉俊一副部長は「判決内容を精査し、上級庁とも協議のうえ、適切に対処したい」とコメントした。
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