大阪地裁(長井秀典裁判長)は6日、大阪府警が容疑者の行動を確認するため全地球測位システム(GPS)の発信器を車両に取り付けた捜査手法が違法かどうかが争われた刑事裁判で「捜査は適法」と判断した。長井裁判長は「プライバシー侵害の程度は大きくない」と指摘し、窃盗罪などに問われた無職の男(36)に懲役4年(求刑・懲役5年)の実刑を言い渡した。男は2012(平成24)年2月~13(同25)年9月、大阪や長崎など5府県で店舗荒らしなど8件を繰り返した。
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GPSを使う捜査について警察庁は、2006(平成18)年に内規で基準を設けたが、司法が捜査の妥当性に関する判断を示したのは初めて。
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大阪府警は逮捕前の捜査で、男らの車両19台にGPS発信器を設置し、携帯電話で位置情報を取得して男らの車両をビデオカメラで撮影。検察側は裁判で、その映像など約100点を証拠請求した。 弁護側は「裁判所の令状なく無断で取り付けており、憲法が保障するプライバシー権の侵害」として証拠採用しないよう求めていた。
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証拠の採否に関する大阪地裁の1月27日付の決定で、地裁は「犯人はナンバープレートを付け替え、高速道路の自動料金収受システム(ETC)を突破するなど高速度で広範囲を移動しており、尾行は困難でGPSは必要だった」と説明。尾行の補助手段で、記録も蓄積されておらず、プライバシーは大きく侵害していないとし、いずれも証拠採用した。
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この日の判決では、弁護側がGPS捜査は違法として量刑を軽くするよう求めていたのに対し、1月27日付決定を踏まえ「考慮する事情ではない」と退けた。警察庁は内規で使用条件として①他の方法による追跡が困難、②設置時に住居侵入などの犯罪を伴わない、③事前に警察本部の許可を得るなどを定めている。
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