韓国・光州(クァンジュ)地裁は11日、韓国のフェリー「セウォル号」沈没事故で乗客らへの救助措置を怠ったとして殺人などの罪で死刑を求刑された船長イ・ジュンソク被告(69)に懲役36年を言い渡した。イ被告とともに操船に関わった機関長に懲役30年、一等航海士ら13人に懲役20~5年をそれぞれ言い渡した。検察側はイ被告ら4人に対し、乗客らに退避命令を出さず、救助措置も取らなかったとして異例の殺人罪の適用を求めていた。
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これに対し裁判長は、「イ被告が2等航海士に乗客の脱出を指示した事実、海洋警察の救助活動が始まっていた事実などから、被告らが乗客らの死亡を容認したとみるのは難しい」などとして、イ被告らの殺人罪を認めなかった。検察側は控訴する方針を明らかにした。
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イ被告は最終意見陳述で「死に値する罪を犯したが、故意に殺人をしようと考えたことは少しもない」などと主張し、殺人罪については否認していた。
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判決は乗員15人全員に対し、「船体が傾いて沈没する状況で、乗客を安全な場所に退避させず、船からの脱出を助けなかった」などと指摘。イ被告には遺棄致死傷などの罪の最高刑を科した。
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事故原因については、船体改造と過積載で復原性が悪化した状態で運航。操舵手の操船ミスで船が傾き、貨物が一方に移動するなどして沈没したと認定した。
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検察側はイ被告に死刑を求刑したが、韓国では1997年12月を最後に17年近く死刑が執行されておらず、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルの基準では「事実上の死刑廃止国」とされている。
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韓国政府は11日、依然行方不明となっている9人の海中での捜索を打ち切った。今後、船体を引き揚げるかどうかの検討を進める。
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<セウォル号沈没事故> 修学旅行の高校生らを乗せて韓国北西部仁川(インチョン)から南部済州島(チェジュド)に向かっていた韓国のフェリー「セウォル号」(乗客乗員計476人)が今年4月16日、南西部珍島(チンド)沖で沈没した。295人が死亡、9人が行方不明。検察は過積載や操縦ミスなどが事故原因と断定。船長ら乗員15人を含め、運航会社や海洋警察などの関係者ら約400人を立件した。韓国国会は今月7日、さらなる真相究明を行う「特別調査委員会」の設置を定めた特別法を可決した。
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