ゼンショーホールディングス(HD)の第三者委員会(委員長・久保利英明弁護士)は31日、牛丼チェーン「すき家」の労働環境に関する調査報告書を経営陣に提出した。過酷な勤務実態が批判されていた深夜の1人勤務体制(ワンオペ)について「解消を早急に実現すべきだ」と指摘している。
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報告書は、社員へのヒアリング・現場スタッフへのアンケートなどに基づいて、「すき家の運営は、法令違反であることはもとより、社員の生命、身体、精神に危険を及ぼす重大な状況に陥っていた」と認定。「過重労働問題等に対する“麻痺”が社内で蔓延し、『業界・社内の常識』が『社会の非常識』であることについての認識が全社的に欠如していた」と、経営側の認識不足を厳しく指摘している。
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報告書はさら、「『昼夜を厭わず、生活のすべてを捧げて働き、生き残った者が経営幹部になる』というビジネスモデルが、その限界に達し、壁にぶつかったもの」と言及。経営層の意識改革を迫っている。
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第三者委は、「すき家」で従業員の残業時間が月100時間を超える過重労働が常態化している点を問題視。「長時間労働を絶対的に禁止するルールを策定すべきだ」と提言し、「店を閉めることになってもこのルールは守らなければならない」と強調している。
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「すき家」は、深夜業務を1人でこなす「ワンオペ」がネットで有名になり、従業員の労働環境への疑問の声が高まっていた。全国に約2,000店を展開する同チェーンだが、今年2月~4月にかけては最大123店舗で人手不足などにより一時休業や時間帯休業を実施することになった。報告書では、この「ワンオペ」についても「深夜時間帯の複数勤務体制を確立すべきである」として、廃止を提言した。
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一方、社内アンケートでは会社を思う多くの声があがったとして、「すき家を支えていこう、変えていこうという思いを持ったクルーや社員の存在こそが、すき家の財産である。当委員会は、経営幹部が強い決意と危機感をもって、こうした貴重な「人財」を最大限に活かす経営を実現していくことを強く願っている」と結んでいる。
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この第三者委員会は、従業員の負担増が深刻化したことを重く受け止めるとして、ゼンショーホールディングスが今年5月7日に発足させていた。
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第三者委員会は31日16時より、この内容について、東京都内で記者会見を行う。
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なお、調査報告書は、ゼンショーのウェブサイトで公開されている。http://www.zensho.co.jp/jp/improve/
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