佐賀地裁(波多江真史裁判長)は11日、国営諫早(いさはや)湾干拓事業((長崎県)の開門調査を命じた福岡高裁の確定判決の履行を促すため国に対し、勝訴した有明海の漁業者らに開門まで1日49万円(1人につき1万円)の制裁金を支払うよう命じる間接強制を決定した。5年間の開門も命じた。司法が決めた開門義務を履行しない国が制裁を受ける異例の事態になった。
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林芳正農相は福岡高裁に、決定への不服申し立てである「執行抗告」と、制裁金支払い命令の「執行停止」を申し立てたと明らかにした。
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地裁は、支払いの猶予期間を国が決定を受け取った翌日から2ヶ月とした。漁業者らは1日当たり合計1億円の制裁金を求めており、漁業者側弁護団は「開門させることに意義があり、金額にはこだわらない」としつつ開門しない場合は増額を求める考えを示した。
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争点は判決を履行できない事情が国にあったかどうか。波多江真史裁判長は決定理由で、「国は地元との交渉や準備工事の代替の検討など、開門に向けた可能な措置を講じていない」と指摘。さらに「漁業者らは生活基盤となる漁業行使権を侵害された」と損害を認めた。
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国側は、長崎県や干拓地営農者らの反対で開門の準備工事に着手できず、開門差し止めを命じた昨年11月の長崎地裁決定もあるため、「国の意思だけで開門するのは不可能」と主張した。これに対し、波多江裁判長は「長崎地裁決定が間接強制を妨げる理由にならない」と判断した。
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※ 間接強制とは:民事執行法で定められた強制執行の一つ。判決などで決まった債務を履行しない相手側に対し、裁判所が一定の金銭を債権者に支払うよう命じることで圧力をかけ、履行を促す。地裁の決定に不服がある場合、執行抗告して高裁の判断を仰ぐことができる。強制執行にはほかに直接強制や、債務者以外の第三者が代行するなどの「代替執行」がある。
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