少年犯罪の凶悪化に対応するため警察庁は11日、これまで成人の容疑者に限ってきた公開手配の対象を、19歳以下の少年にも広げることを決め、全国の警察本部に通達した。犯行が悪質で再犯の恐れが高い場合には似顔絵や身体的特徴を公表できるとし、顔写真や氏名も「例外だが、全く公開しないわけではない」(警察庁少年課)としている。同庁は、個別のケースごとに、公開捜査の必要性があるか都道府県警と協議して判断するとしている。 |
容疑者の特徴を公表し市民から情報提供を求める公開捜査について同庁は、98年の通達で凶悪犯罪や社会的反響の大きい事件などを対象とし、原則として容疑者が成人のケースに限るとしたが、少年事件に関する基準は示していなかった。このため容疑者が明らかに少年だったり、少年の可能性が少しでもあったりした場合には、公開捜査はほとんど行われていなかった。 |
しかし、今月9日に公表された政府の「青少年育成施策大綱」に、「人権保護と捜査上の必要性を勘案して、少年事件の公開手配のあり方の検討を行う」との文言が盛り込まれたことを受け、警察庁は今回の通達で、「必要かつ適切と認められる場合には、例外的に許される」との考え方を示すことにした。 |
公開が許されるケースは、犯行手段が悪質なうえ再犯の恐れが高く社会的不安を与えた事件のうち、公開以外に容疑者逮捕の方法がない場合とし、想定される犯罪としては、連続殺人や連続婦女暴行事件などを挙げている。公開する情報の内容は「ケース・バイ・ケースで判断する」としているが、氏名や顔写真の公開もあり得るとしている。 |
また、容疑者の身元が明らかでない少年事件の場合でも、監視カメラなどに映った写真や似顔絵、身体的特徴、音声など捜査で得た資料を公開する。ただ、容疑者が14歳未満の触法少年の可能性がある時には、監視カメラの映像を似顔絵に変えるなどの配慮もするとしている。 |
00年6月に岡山県で高校3年の少年(当時17歳)が金属バットで高校の後輩や母親を殺傷した事件では、岡山県警は自転車で逃走した少年を指名手配したものの、氏名や顔写真は明らかにしなかった。今年7月に長崎市で12歳の少年が4歳の男児を殺害した事件でも、少年の姿をとらえた監視カメラの映像は公開されなかった。 |
今回の通達を巡っては、少年法に詳しい弁護士や有識者から、犯罪少年の更生の妨げになるとの指摘があるが、警察庁少年課は「公開によって得られる利益の方が大きいと判断した場合に限定する方針なので、少年法の理念からは逸脱しない。社会的にも容認されると考えている」としている。 |