政府の中央防災会議の作業部会(主査・河田恵昭関西大教授)は28日、マグニチュード9クラスの「南海トラフ巨大地震」対策の最終報告書を公表した。
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最速2~3分で襲ってくる津波対策として、すぐに安全な場所に避難する「自助」の取り組みが最重要だと強調している。被害が関東から九州までの広い地域に及び、国や自治体の支援に限度があるため、地域で助け合う「共助」を進めることや、日本全体での支援体制を検討することも求めている。
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報告書は、被害の程度に応じて避難所に入る被災者を選ぶ、新たな考え方も盛り込んだ。政府は今年度中に対策大綱をまとめる。
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政府は東日本大震災を教訓に、南海トラフで起こる最大級の地震の被害と対策を検討してきた。高さ10メートル以上の巨大津波が関東~九州の沿岸に到達し、震度6弱以上の強い揺れが24府県を襲う。その結果、昨年8月に死者が最悪で32万3,000人、今年3月には220兆3,000億円の経済被害が出ると想定した。
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28日に公表した最終報告では、被災地が広い範囲にわたり、支援が行き届かない恐れがあることから、住民は食料などを1週間分以上備蓄する一方、国は都道府県どうし広域に連携して支援する枠組みを検討すべきだとしている。
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国はこれまで「東海地震」と「東南海・南海地震」で、それぞれ別々の法律に基づいて防災対策を立ててきたが、今回の報告を受けて南海トラフ全体で防災対策の検討を進めることにしている。
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報告書を取りまとめた名古屋大学大学院の山岡耕春教授は、「観測や研究が進むにつれて地震の発生には多様性があり、次に起こることを確実に予測するのは難しいことが分かってきた」と述べて、「地震の対策は予知や予測を前提とせず、いつ起きてもおかしくないように一定レベルの防災対策をするのが基本だ」と指摘した。
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そのうえで、「南海トラフで何らかの変動が観測される可能性は少なくない。地震が発生しやすいと捉えられたときは、例えば家庭のストックや流通量を増やすことで被害量を減らすことができる。ふだんより地震が起きやすいとみられる際にどうするか、今後議論してほしい」としている。
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