政府の青少年育成推進本部は9日、「青少年育成施策大綱」をまとめた。青少年の育成に対する政府の基本理念と、5年をめどとした中長期的な施策の方向性を示している。現行法で刑事責任に問われることのない14歳未満の触法少年の事件について、警察機関に捜査に準じた調査権を与えて事実解明を徹底することや、少年院への入所年齢の引き下げなどを検討するとし、少年事件対策に比重が置かれている。これを受け、関係省庁は少年法や少年院法などの改正の検討に着手する。 |
大綱は、少子高齢化、情報化、国際化など社会の変化を背景に、青少年のなかに社会的自立が遅れたり、適応できなくなったりしているケースが増えていると指摘。そのうえで(1)社会的自立の支援、(2)特に困難を抱える青少年の支援、(3)能動性を重視した青少年観への転換、(4)率直に語り合える社会風土の醸成、と4つの重点課題をあげ、乳幼児期、学童期、思春期、青年期ごとに施策の方向性を打ち出している。 |
触法少年の事件について、大綱は「警察機関が必要な調査を行うことができる権限を明確にするための法整備について検討する」とした。容疑者が14歳未満とわかった場合、現行では警察には司法解剖や家宅捜索などの捜査をする権限がない。大綱は、事実解明を徹底することが少年の更生の大前提であるとした。 |
また、現行では少年院への入所年齢は14歳以上と規定されており、触法少年の場合は児童福祉目的の児童自立支援施設などに収容されている。これを見直し、ここの少年の状況に応じて、その立ち直りに必要な処遇を選択できるようにする観点から、14歳未満でも早期の矯正教育が必要であると認められる場合には、少年院送致を選択できるよう少年院法の改正を検討する。 |
さらに、「人権保護と捜査上の必要性を勘案して少年事件の公開手配のあり方について検討する」とし、これまで、いかに切迫した状況でも行われていない少年の公開手配について再考を促している。 |
保護観察中の成人が事件を犯した場合、刑の執行猶予や仮出獄を取り消す措置がある。大綱は、保護観察中の少年についても「その順守事項の順守を確保し、指導を一層効果的にするための制度的措置につき検討する」としており、指導を守らない少年について何らかの制裁措置を検討する必要性を示唆している。 |