強盗殺人罪などに問われた被告に死刑を言い渡した今年3月の福島地裁郡山支部の裁判員裁判で裁判員を務めた60代女性が「急性ストレス障害(ASD)」と診断された問題で女性が7日午前、慰謝料など200万円の国家賠償を求める訴えを仙台地裁に起こした。裁判員制度を「憲法違反」と主張、裁判員法を成立させた国会の責任も追及する。09年5月に裁判員制度が始まって以降、裁判員経験者が制度の是非を問う初の裁判となった。
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訴状によると、女性は証拠調べで見せられた被害者2人の遺体の刺し傷計24ヶ所すべてのカラー写真などが頭から離れず不眠症や吐き気、フラッシュバックなどに苦しむようになった。「裁判員メンタルヘルスサポート窓口」に電話し地域の保健所を紹介されたが対応してもらえず、3月22日に福島県内の病院でASDと診断された。
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女性側は、裁判員になったためにASDになったと主張。裁判員制度が苦役からの自由を保障した憲法18条や、個人の尊厳や職業選択の自由を認める同13、22条に反するとし、法案提出から3ヶ月弱の審議で成立させた衆参両院にも過失があったと訴えている。
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裁判員制度を巡っては、覚せい剤取締法違反罪などに問われ1審で懲役9年の判決を受けた外国籍の被告が上告審で、「制度は下級裁判所の裁判官は内閣で任命するとした憲法80条や同18条などに違反する」と主張したが、最高裁大法廷は11年11月に「合憲」と判断している。女性の代理人の織田信夫弁護士(仙台弁護士会)は、「今回の訴えは裁判員経験者が起こしたもので事案が異なる。新たな憲法判断が必要だ」と語った。
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