1997年に東京都渋谷区で起きた東京電力女性社員殺害事件で無期懲役が確定していたゴビンダ・プラサド・マイナリさん(46)=ネパールに帰国=の再審初公判が29日、東京高裁(小川正持裁判長)で開かれた。検察側は「被告以外の者が犯人である可能性を否定できず、被告を有罪とは認められない。被告は無罪との判断に至った」と述べマイナリさんは無罪だと主張した。
|
公判はこの日で結審した。判決は11月7日に言い渡されるが、マイナリさんを無罪とするのは確実だ。
|
この事件では、再審請求審で実施されたDNA型鑑定で、被害者(当時39)の体内に残っていた精液と現場の部屋に落ちていた体毛の型が一致しマイナリさんとは別の男性のものと判明した。これを受けて高裁は今年6月、「第三者による犯行の疑い」を認めて再審開始を決めた。
|
検察側はその後も「マイナリさんは有罪」との姿勢を崩さなかったが、再審開始が確定した後に独自に進めた鑑定で、女性の右手の爪からも同じ第三者の型が検出されたため、今月になって無罪主張に転じた。
|
東京電力女性社員殺害事件の再審初公判後、青沼隆之東京高検次席検事がコメントを発表した。全文は次の通り。 「本日の公判で、検察官は『被告人は無罪』との意見を述べた。検察官が従来の主張を変更したのは、確定審の段階では技術的に困難だった鑑定が、その後の科学技術の進歩によって可能となったことなどによるものであり、また、検察官がことさらに証拠を隠したなどの事実も認められず、その捜査・公判活動に特段の問題はなかったと考えているが、結果として、無罪と認められるゴビンダ・プラサド・マイナリ氏を、犯人として長期間身柄拘束したことについては、誠に申し訳なく思っている」。
|