神戸地裁で28日、明石・歩道橋事故公判が開かれたが、証人尋問された永田裕・元明石署長は、「署の現地本部の位置は事故後に知った。地域官から報告がなかった」「規制が必要な状況について指導・確認しなかった。(部下が)やってくれていると思っていた」と証言したが、花火大会での同署の警備本部長でありながら、証言から浮かび上がった「他人任せ」に、傍聴席の遺族から批判が渦巻いた。 |
永田元署長はグレーのスーツ姿で神戸地裁に出廷した。遺族を一べつして、証人席についた。事故直後の01年9月と退職前の02年春の訪問以来、1年半ぶりの姿に、遺族から厳しい視線が注がれた。 |
永田元署長は、県警の雑踏警備実施要領を根拠にした自主警備原則を何度も強調し、「行事を計画した主催者が安全対策を取るべきで、警察は主催者では対応できない犯罪予防、交通規制、事件事故防止にあたるべきだ」と述べた。弁護側が市職員や警備会社の強制力のなさを指摘すると、「要請があれば警察が強制力を行使する」。「要請がなければしないのか」には、「要請と混雑状況の情報から判断する」と答えた。「自主警備の限界を超えていた」との指摘には、「そのための(市、警備会社と話し合う)場があったのに。情けない」と突然号泣した。 |
遺族の有馬正春さんは「小さい行事とは違う。10万人規模なのだから、3者連携の必要性は分かっていたはずなのに。無責任だ」と突き放した。元署長が元地域官に「必要な時は思い切って暴走族対策の警官を使え」と勧めながら、暴走対策の班には声かけしなかったために生じた指揮系統の乱れも明らかになった。遺族の三木清さんは「署全体のいい加減さの背景が分かった」。下村誠治さんも「真相解明には今回の尋問だけでは不十分。民事でも(証人で)呼びたい」と話した。 |