警察庁は3日、昨年の自殺統計を公表した。自殺者総数(確定値)は前年より3.5%減少したものの3万1,690人で13年連続の3万人超えとなった。「就職失敗」が原因・動機の一つと判断された人が前年より2割多い424人にのぼり、うち大学生は46人で前年の2倍になった。「超氷河期」と言われる厳しい就職環境を反映したとみられる。一方、「負債」は改正貸金業法の完全施行を背景に減少した。
|
自殺者が、3万2,000人を下回るのは、01年以来9年ぶり。警察官の聞き取りなどによって原因・動機を家庭問題▽健康問題▽経済・生活問題▽勤務問題▽男女問題▽学校問題▽その他、の7つに区分し、さらに52項目に分けて、推定される項目を3つまで選択して集計している
|
「経済・生活問題」のうち、「就職失敗」を原因に含むとされた自殺者は、07年180人、08年253人、09年354人と増加傾向が続き、10年は70人(19.8%)増となった。
|
このうち大学生は、07年13人、08年22人、09年23人だった。高校生や専修学校生も含めると10年は153人となった。これら就職失敗に絡む自殺者は年代別では20代が最も多く153人で、未成年者は6人だった。
|
「経済・生活問題」のうち、「負債」関連の3項目については、「多重債務」1,306人(前年比19.9%減)▽「連帯保証債務」47人(同34.7%減)▽「その他」1.287人(同17.4%減)で、いずれも前年から大きく減少した。昨年6月に貸金業者からの借入残高を年収の3分の1までに制限する「総量規制」を盛り込んだ改正貸金業法が完全施行されたことの反映とみられる。
|
「事業不振」や「失業」も前年を下回り、「経済・生活問題」関連全体では、計7,438人で。前年より11.2%減となった。
|
半面、家庭問題関連は、計4,497人で前年比9.2%の増加で、このうち「子育ての悩み」は157人で、前年からの増加率が44%と目立った。全項目を通して最も多かったのは健康問題に含まれる「うつ病」で7,020人に達した。
|
◇NEC元社長が自殺
|
昨年の自殺統計が公表された前日の2日、大手電機メーカー・NEC(東京都港区)の特別顧問で元社長、西垣浩司さん(72)が東京都練馬区の自宅で首をつった状態で発見され、搬送先の病院で死亡したことが分かった。目立った外傷や室内に第三者が侵入した形跡はなく、警視庁・石神井署は西垣さんが自殺したとみて調べている。
|
西垣さんは自宅で妻(69)と2人暮らし。2日夕に外出先から帰宅した妻がシーツを使って首をつっている西垣さんを発見し110番通報した。窒息死とみられる。遺書は発見されていないという。西垣さんは最近、健康状態に不安があり、近く入院する予定だったといい、石神井署が関連を調べている。
|
西垣さんは東京都出身で、1961年に東大経済学部を卒業しNECに入社。99年3月から4年間、社長を務め半導体事業の分社化や本社ビルの証券化など経営改革を進めた。03年3月~04年6月は副会長。08年4月~昨年6月は独立行政法人・情報処理推進機構理事長を務めた。
|