東京ビッグサイトで開催された「ホームエンターテイメントビジネスショウ」初日の10月9日に約300名が参加して万引き防止フォーラム「我々は万引きを許さない!」が行われ、パネルディスカッションでは「万引きをどうするか、その具体的対策」と題して、ジャーナリストの木元教子さんがモデレーターとなり、万引き防止に全力で取り組んでいる三洋堂書店・加藤和裕社長や、万引きの温床と糾弾されている新古書店のブックオフコーポレーション・坂本孝社長、そのほか青少年育成国民会議・森田廣育成運動部長、新星堂・宮埼正紀社長、ゲオ・遠藤結城社長らが万引きの実態、古物営業法の問題点、盗品の買取問題などに焦点をあてて討論が交わされた。 |
パネルディスカッションに先立って、警察庁生活安全局生活安全企画課の首藤祐司都市防犯対策官が、「万引きの認知件数は平成15年8月末現在で前期比2.9%増で、うち青少年の割合は減っていると実態を説明、万引き発生時には直ちに警察への通報を」と要請した。 |
その後、三洋堂書店の加藤社長は自店の例をあげ、「警察の認知件数は氷山の一角。業務上すべての万引き犯を通報できない。最近は青少年の間で、換金目的で大量に、が万引きのキーボードとなっている」実態を説明した。 |
これに対して、ブックオフコーポレーションの坂本社長は、「うちが一方的に悪いといわれるために出てきたのではない。万引きの温床になるのは駄目だということでリサイクルブックストア協議会を結成し、自主規制も行っている。我々にも活字文化を伝えているという自負がある。一緒に対応策を話し合いたいと思うが、業界の方々がいつも出てこない」と不満を述べた。そのうえで「うちも万引きにはかなり悩まされてきた。現在、色々な対策を講じているところだが、一番効果のあるのは客への声掛け。声掛けや挨拶は煩いとクレームがくるほど徹底してやっている」と説明した。 |
これに対して三洋堂書店の加藤社長は、「全国の新古書店6,000店のうち、リサイクルブックストア協議会に1,200店しか加盟していない」と実態を指摘、また「平成7年の古物営業法の規制緩和で現在、1万円未満の換金はフリーになっているが、1万円未満でも台帳記載と身分提示を原則とすること」を訴えた。 |
ブックオフコーポレーションの坂本社長は、「盗品換金はうちではないと思うが、新古書店全体でみればやっている可能性は高いと思う。うちは、顧客カードで対応している。商品を定価の半額以上で買い取ることはまずあり得ない。盗品とわかった場合は毅然とした態度で臨んでいる。法を厳しくすることで、盗品の買取りが少なくなるかは疑問だ」と応じた。さらに、青少年に万引きさせないための施策として坂本社長は、「うちでは全店で盗品は買い取らないということが浸透している。あの店では買い取ってくれないと認識されるような取り組みが必要」と述べた。 |
これに対し三洋堂書店の加藤社長は、「簡単に換金できる仕組み自体が問題。ブックオフコーポレーションの対策だけでなく、協議会未加盟の店に網がかからない以上、歯止めにならない。業界全体のことを考えて欲しい」と言い返した。さらに「ゲオやブックオフでも盗品を大量に買い取っている実態はヒアリングでわかっている。その実態が経営者に報告されていない。経営者に認識がないなら対策も打てない」と不満をもらした。 |
坂本社長は、「業界をあげて話し合うのは大賛成。お互いを認め合いながら変えていくことが必要。とにかく声掛けが一番の防止策」と最後まで主張を変えなかった。 |
加藤社長は、全国85の書店と連合して万引き防止を働きかける「タグ&パック」を結成しているが、このほどパネルディスカッションの模様を2時間近くのビデオテープに収録し、機関紙「タグ&パック」No.17号(10月21日発行)と一緒に関係者に配布した。 |
この機関紙「タグ&パック」No.17号では、警察庁生活安全局生活安全企画課の首藤祐司都市防犯対策官が講演した中で、「万引きの認知件数は平成15年8月末現在で前期比2.9%増で、うち青少年の割合は減っていると実態を説明、万引き発生時には直ちに警察への通報を」と要請したことについて、三洋堂書店の加藤社長は、「万引き犯で捕捉できるのはできるのはごく少数。そのうえ捕捉した万引き犯をすべて警察に通報しているわけではないので、実態はこの何十倍にものぼる。当店では20歳未満の少年の占める割合は80%を超えている。これは小学生・中学生の万引き犯に関しては警察ではなく、親や学校に通報しているからで、逆にいえば小売店側の配慮が少年犯罪を見かけ上、小さくしている。警察庁の発表資料では13歳以下の万引き犯は皆無だが、警察が把握していないだけ」と見解を述べている。 |
さらに加藤社長は、「万引きフォーラムではブックオフの坂本社長が何度も万引きを減らすにはお客様と目を合わせて、いらっしゃいませという挨拶をすれば良いという趣旨の発言をしたが、これは2つの意味で失礼な発言だ。まず新星堂をはじめ、ちゃんとお客様にいらっしゃいませと挨拶をしているのに、万引き被害に苦しんでいるレコード店、書店に対して失礼だ。お客様への挨拶は、小売業を営むものにとって、とても大切なこと。出来心の犯行に対しては、一定の効果はある。しかし今問題となっているのは集団で、換金目的で、大量万引きを繰り返す確信犯の青少年である。 |
挨拶程度で解決できるほど簡単な問題に、300名もの業界関係者が参加しただろうか。多くの参加者が結集したのは、この問題が放置できない、火急速やかに対応する必要のある最優先の問題だという共通認識になっている証である。それなのに、そのような場で、なんら本質的・抜本的な対策を示すことなく、挨拶すれば良いと言い放つブックオフ坂本社長の発言は300名余の参加者に対して大変に失礼な発言」と述べている。 |
さらに「タグ&パック」No.17号では、ブックオフの盗品換金の実態だとして、自店であった次の例を紹介している。 |
・我が社でコミックを1巻から10巻まで揃えて大量万引きした13歳の少年は、ブックオフは保護者同意書があれば売れるとうそぶいた。 |
・2人組(1人は逃走した)で12冊を盗んだ中学2年生は「なぜ、コミックを窃盗したのか?」との問いに、「中古屋に売る積りで」と答え、ブックオフの店名を告げた。 |
・シャーマンキング1巻から12巻を揃えて盗った男は、自称3回目の犯行で、窃盗理由は「読みたかったから」と答えたが、その後ブックオフ刈谷店に売っている。 |
そして、「いくらでも盗品換金の事実があるのに、ブックオフ坂本社長は、同じ本を2冊は買わない、青少年には保護者の同意書を取っている、住所・氏名も確認している、だから我が社に限って盗品の買取りはないはずだといっている。盗品の買取りはないという前提で議論する以上、そもそも問題がないわけで、対策は不要となる。結果として、現状通りの盗品換金自由自在状態が放置されてしまう」と主張している。 |
万引き防止を訴える三洋堂書店の加藤社長と、同社長が率いる「タグ&パック」とブックオフ坂本社長との万引きをめぐってのバトルは、万引き防止で有効な策が見つからない今、今後も激しさを増して展開していくに違いないだろう。 |