警察庁は28日、09年版警察白書を閣議に報告した。「日常生活を脅かす犯罪への取り組み」と題した特集では気付かないうちに犯罪に巻き込まれる危険が増加しているため、治安の改善が体感しにくいと指摘している。振り込め詐欺対策の「だまされたふり作戦」のように「国民が被害防止に向けた取り組みに参画し、犯罪に対する『抵抗力』を高めていくことが必要」と訴えている。
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白書では、犯罪のタイプを(1)振り込め詐欺や悪質商法など財産が脅かされる、(2)食品の偽装表示や中国製冷凍ギョーザの中毒事件など生命・身体が脅かされる、に分類し、特に振り込め詐欺は04年以降毎年250億円以上の被害を出す一方、検挙率(08年)は全刑法犯より10ポイントも低い21.5%にとどまっているとしている。
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特徴として▽架空・他人名義の携帯電話や口座など犯行ツールの匿名性▽ATM(現金自動預払機)を利用しない手口の増加や転送電話サービスの悪用など手口の多様化・巧妙化▽役割分担を細分化し、拠点を頻繁に移動するなど犯行組織の流動性、を挙げている。
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また、食の安全にかかわる事件は増加傾向にあり、08年に逮捕・書類送検されたのは37件計91人。うち食品産地などの偽装表示は16件57人で、統計を取り始めた02年以降で最多となった。
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振り込め詐欺対策では、金融機関などとの連携を強調。生体認証機能を備えた偽造されにくい身分証明システムの導入を検討するとしている。安藤隆春長官は「被害者の大半が高齢者で、事件後の失望感や疎外感まで考えると、大きな治安問題になる懸念がある」としている。
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また、08年の事案分析が中心のため栃木県足利市で90年に女児が殺害された「足利事件」で、無期懲役で服役した男性が釈放され再審開始が決定したことについては、「今後、捜査における問題点等について検討する」と短く触れるにとどまっている。足利事件をめぐっては、92年の警察白書で釈放された男性とみられる容疑者について一部犯人視した記述があり、警察庁は再審公判の結論や現在進めている検証結果を踏まえ修正の可否も含めて検討するとしている。
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