不法滞在で強制退去処分になった韓国人の女(51)が08年4月に入国審査時に指紋照合で本人確認する生体認証(バイオ)審査をくぐり抜け不法に再入国していたことがわかった。再入国が発覚したのは同8月で、女は再び東京入国管理局に摘発されると、「特殊なテープを指にはって指紋を変造し、審査を通過した」と供述した。
|
東京入管は、女の再入国に韓国人ブローカーが介在したとみられることから、「同じ手口で相当数の韓国人が不法入国した恐れがある」とする報告書を法務省に提出、同省も実態解明に乗り出している。
|
このシステムは、テロリストの入国阻止を主な目的に40億円以上をかけて導入された。比較的単純な手口で破られた可能性が浮上したことで、入国審査のチェック体制とともに、テロ対策についても見直しを迫られることになりそうである。
|
入管関係者によると、女は観光目的で来日したにもかかわらず、滞在期限後も長野市内でホステスをして働いていたとして07年7月中旬に摘発され、5年間は日本への再入国を禁じる強制退去処分を受けて韓国に送還された。
|
しかし08年8月初め、「同じ女が長野にいる」という情報が寄せられたのをきっかけに東京入管が同市内のアパートで暮らしている女を発見、入管難民法違反容疑で再び摘発した。
|
女は偽造旅券を所持しており、同年4月末、この偽造旅券を使って青森空港で入国審査を通過した記録が残っていた。同入管が女を追及したところ、(1)韓国人ブローカーから偽造旅券を購入し、青森空港行きの航空券を買うよう指示された、(2)ブローカーからは特殊なテープも渡され、青森空港の入国審査場でテープをつけた人さし指をスキャナーにかざして審査を通過した、と供述したという。
|
同入管が実験した結果、市販のセロハンテープなどではスキャナーに指紋が映らずにエラーが表示されるため、審査を通過できないことが判明。このため特殊なテープが使用された可能性があるとみて女の取り調べを続けたが、テープの素材やブローカーの特定につながる供述は得られず同9月中旬、強制退去処分にした。
|
同入管は処分後、法務省に報告書を提出した。バイオ審査をくぐり抜ける特殊なテープが出回っている可能性や、ブローカーが同じ手口で多数の不法入国を仲介している可能性を指摘した。
|
同省によると、青森空港の記録には女が審査を通過した際の指紋の画像は残っていたが、不完全な指紋で詳しく調べても女のものとは一致しなかった。
|