福岡県の麻生知事は7日の記者会見で、商店街や公園などの公共の場所に設置される「防犯カメラ」についてプライバシーに配慮した運用を図るためのガイドラインを発表した。同県では、防犯カメラの活用とプライバシー保護との調和を図るため、平成18年10月、有識者で構成する「防犯カメラ活用検討会議」(会長:木村俊夫 九州国際大学法学部教授)を設け、その設置運用のあり方について検討を進めていた。このほど同会議の報告書を踏まえ、設置者が防犯カメラの適切な運用を行い、犯罪発生の可能性が高い場所での効果的な活用が図られるよう、「防犯カメラの設置及び運用に関するガイドライン」を策定した。
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それによると、(1)撮影していることが相手に分かるように防犯カメラの設置を表示することや、(2)画像の漏洩を防ぐために管理責任者を決め、録画装置や記録媒体の保管場所についてはカギをかけることなどが盛り込まれている。
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麻生知事は「防犯カメラは犯罪防止に大きな効果がある一方で、撮影された個人の映像が本来の目的以外に使われるとの懸念もあり、適正な設置と運用の基準が必要だ」と述べた。福岡県は、今後、ガイドラインのパンフレットを配布するなどして、防犯カメラの適正な運用を呼びかけることにしています。
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「福岡県防犯カメラの設置及び運用に関するガイドライン」の概要は次のとおり。
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1.ガイドライン目的 安全・安心まちづくりを進める上で、防犯カメラの設置は広く有用であると認められており、民間施設では、防犯カメラの設置が進んでいる。県の調査でも、多くの事業所から防犯カメラの設置は犯人の検挙や犯罪の防止に効果があったとの回答を得ており、一定の効果があると認められる。一方では、知らないうちに自己の容ぼうなどが撮影され、目的外に利用されることなどに不安を感じる県民もいる。そこで、防犯カメラの有用性とプライバシーの保護との調和を図り、防犯カメラの設置者が防犯カメラを適切かつ効果的に活用できるよう、設置及び運用に関するガイドラインを策定した。
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2.ガイドラインの対象となる防犯カメラ○不特定多数の者が出入りする場所に設置されたカメラ・道路、公園・商店街、コンビニ・デパートなどの店舗・空港ターミナル、鉄道駅、バスターミナル・銀行その他の金融機関の店舗・遊園地、野球場などのレジャー・スポーツ施設・ホテル・旅館、駐車場など※マンションなどの集合住宅の共用部分や工場の敷地内に設置されたカメラは、不特定多数の者が出入する場所ではないので、このガイドラインの対象ではない。
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○犯罪の防止を目的に設置されたカメラ※事故防止や防災を主目的にするカメラであっても、犯罪を防止する目的を併せ持つカメラは、このガイドラインの対象とする。
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○録画装置(ビデオ、DVDレコーダーなど)を備えるカメラ※録画装置を備えていないカメラは、画像の漏洩や目的外の利用の恐れがないことから、このガイドラインの対象ではない。特定の個人を識別することが出来ないものは、このガイドラインの対象ではない。
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3.防犯カメラの設置及び運用に当たって配慮すべき事項(1)設置目的の設定と目的外利用の禁止 防犯カメラの設置目的(犯罪の防止など)を明確に定め、目的を逸脱した利用を行わないようにする。
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(2)撮影範囲、設置場所など 防犯カメラで撮影された画像は、その取り扱いによってはプライバシーを侵害する恐れがあるので、防犯効果が発揮され、かつ不必要な画像が撮影されないように撮影範囲を設定し、設置場所、設置台数を定める。
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(3)防犯カメラを設置していることの表示 県民に防犯カメラが設置されていることをあらかじめ周知するとともに、犯行を抑止する効果を高めるため、撮影対象区域内またはその付近の見やすい場所に防犯カメラを設置していることを表示する。また、施設の名称などから設置者が明らかな場合を除き、設置者の名称も表示する。
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(4)防犯カメラの管理責任者、操作取扱者の指定 防犯カメラの設置者は、防犯カメラの管理及び運用を適正に行うため、管理責任者を指定する。管理責任者は、自ら防犯カメラの操作ができない場合は、操作取扱者を指定し、機器の操作などの業務を行わせる。
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(5)防犯カメラの設置者など(設置者及び管理責任者)の責務 設置者などには次のような責務がある。・撮影された画像の適正な管理・撮影された画像の画像の提供の制限・苦情への対応・その他防犯カメラの適正な設置及び運用に関し、必要な措置を講じること。
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(6)撮影された画像の適正な管理 技術の進歩により、画像のデジタル化や記憶媒体の小型化が進み、画像のコピーや持ち出しが容易になっているので、画像の流出、改ざんなどの防止を図るため、次の事項に留意し、必要な措置を講じる。・録画装置や録画媒体(ビデオテープ、DVD、ハードディスクなど)がある場所に施錠などを行い、画像情報の持ち出しが出来ないようにする。・許可した者以外は立ち入りが出来ないようにする。・画像の保存期間は、それぞれの設置目的を達成する範囲内の必要最小限度の期間にする。・保存期間を経過した画像は速やかに消去するか、上書きによる消去をするようにする。・録画媒体を処分するときは、破砕または、復元の出来ない完全な消去などを行い、画像が読み取れないようにする。(可能な限り、複数人により確認する)。・録画媒体を処分するときは、処分の日時、方法などを記録しておく。
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(7)撮影された画像の提供の制限 県民のプライバシー保護のため、第三者への画像の提供は禁止する。ただし、次の場合は提供できる。・刑事訴訟法などの法令に基づく場合 ※刑事訴訟法第197条第2項に基づく捜査機関からの照会や弁護士法第23条の2第2項に基づく弁護士会からの照会など。・人の生命、身体または財産に対する差し迫った危険があり、緊急の必要性がある場合 ※行方不明者の安否確認など。・捜査機関から犯罪捜査のため情報提供を求められた場合。 ※画像を提供する場合は、提供を必要性を十分に検討する必要がある。その際、提供先から身分証明書などの提出を求めるなど身元の確認を行う。また、画像を提供したときは、提供日時、提供先、提供理由、提供した画像の内容などを記録しておく。
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(8)苦情への対応 県民などの不安感を解消するため、県民などからの苦情や問い合わせに対し迅速かつ適正に対応する。
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(9)防犯カメラ設置運用要領の策定 防犯カメラの設置者は、県民のプライバシーに配慮するため、「防犯カメラ設置運用に関する要領」を定めるとともに、関係職員に研修などを実施し、運用要領の内容の徹底やプライバシー保護に関する意識啓蒙を行う必要がある。
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(10)個人情報保護法の遵守 防犯カメラにより撮影された画像は、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)の個人情報に該当する可能性がある。事業者が個人情報を取り扱う場合は、このガイドラインのほか、個人情報の保護に関する法律の規定に基づき、適正に取り扱う。
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(11)業務の委託 防犯カメラの設置者は、防犯カメラの設置、施設管理業務や警備業務を委託する場合は、運用要領の遵守を委託条件にするなど、適正な設置、運用を徹底する。
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【防犯カメラ設置運用要領(参考例)】 1.趣旨 この要領は、個人のプライバシーの保護に配慮しつつ、次項に定める設置目的を達成するため、○○○○が○○施設に設置する防犯カメラの設置及び運用に関し必要な事項を定めるものとし、もってその適正な設置運用を図るものとす る。
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2.設置目的 防犯カメラは、○○施設における犯罪防止や事故防止のために設置するものとする。
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3.管理責任者等 (1)防犯カメラの適正な設置運用を図るため、管理責任者を置くものとする。 (2)管理責任者は、○○課長とする。 (3)管理責任者は、防犯カメラの操作を行わせるため、操作取扱者を置くものとする。 ※管理責任者自らが防犯カメラの取り扱いができない場合 (4)操作取扱者は、○○とする。 ※又は「管理責任者が指定したものとする。」
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4.設置の場所等 (1)設置の場所及び設置台数 別紙配置図省略)のとおり、○○施設に○台の防犯カメラを設置する。 ※配置図には、カメラの設置箇所、撮影方向を表示 (2)設置の表示 防犯カメラの撮影区域の見やすい位置に、「防犯カメラ稼働中」と記載した表示板を掲示する。表示板には、設置者名を記載するものとする。 ※施設の名称などから設置者名が明らかな場合を除く。
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5.画像の管理 (1)保管場所 録画装置の保管場所は、○○室とし、管理責任者が施錠を行うなどして、適正に管理するものとする。 (2)立ち入り制限 保管場所には、管理責任者、操作取扱者及び管理責任者が許可した者以外は立ち入ることができない。 (3)保存期間 保存期間は、○○とする。ただし、管理責任者が特に必要があると認める場合、保存期間を延長することができる。管理責任者は、保存期間を延長したときには、その理由を記録するものとする。 (4)画像の消去 保存期間を経過した画像は、重ね取り等により速やかに、かつ、確実に消去するものとする。記録された記録媒体を廃棄する場合は、管理責任者を含め複数人で完全に消去されたことを確認の上廃棄する。
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6.画像の利用及び提供の制限 記録された画像は、設置目的以外の目的のために利用しないものとする。また、次の場合を除き第三者に提供しないものとする。 (1)法令に基づく場合 (2)人の生命、身体又は財産に対する差し迫った危険があり、緊急の必要性がある場合 (3)捜査機関から犯罪捜査のため情報提供を求められた場合 画像の提供を行うときは、提供者から身分証明書等の提出を求め、確認を行うとともに提供の必要性を検討するものとする。画像を提供したときは、提供日時、提供先、提供理由、提供した画像の内容等を記録するものとする。
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7.苦情の処理 設置者及び管理責任者は、防犯カメラの設置及び管理に関する苦情を受けたときは、迅速かつ誠実に対応するものとする。
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