北九州市小倉北区の独り暮らしの男性(52)が自宅で亡くなり、死後約1ヶ月たったとみられる状態で今月10日に見つかったが、男性は昨年末から一時、生活保護を受けていたものの4月に「受給廃止」となっていた。市によると、福祉事務所の勧めで男性が「働きます」と受給の辞退届を出した。しかし、男性が残した日記には、そうした対応への不満が書かれ、6月上旬の日付で「おにぎり食べたい」などと空腹や窮状を訴える言葉も残されていたという。
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この問題で、その後、同市は「収入などを調べずに受給を廃止するのは不法」とした06年9月の広島高裁の確定判決を知らずに収入などを調べることなく、男性の生活保護を不法に廃止していたことがわかった。厚生労働省はこの判決を各自治体に通知していなかった。この裁判は、広島県東広島市の女性がパートに就くことを理由に調査を受けないまま生活保護の辞退届を書かされ保護を廃止されたとして東広島市を相手取って廃止処分の取り消しと慰謝料を求めたもの。
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高裁判決によると、女性の実際の収入は月5、6万円だったが、市は給与などの調査もせずに「自立のめどがある」として辞退届の文案を作り、女性に出させた。高裁は「自立のめどがあるかどうか客観的に判断せずに保護を廃止したのは不法」として市の処分を取り消し、慰謝料30万円の支払いを命じた。市側は上告を断念し判決が確定した。
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北九州市地域福祉部長は、「判決は知らず、“自立のめどがあるかどうか客観的に判断する”という運用はしていなかった。生活保護法の趣旨にもとるような運用は改めないといけない。だが、今回の件では男性の自発的な意思に基づいて廃止を決定した」としている。
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また、判決を通知しなかったことについて厚生労働省は、「辞退届については法律などに規定がないため推移を見守ることになった。北九州市は当然認識していると思っていた」としている。
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