阪神高速道路会社が今春から、「ノンストップ料金収受システム(ETC)」をめぐる不正通行対策として不正通行車両を瞬時に特定し撮影した画像データを蓄積する画期的なシステムを導入した。ナンバープレートだけでなく、運転者も鮮明な画像でとらえられる。会社ぐるみなど悪質な場合はデータをそろえて警察に通報することにしており、すでに逮捕にもつながったケースがある。全国6つの高速道路会社で初の試みに同じ悩みを抱える他社からも注目が集まっている。
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不正通行はETCの普及が進むに従って急増し02年度の約15万件が05年度には30万件超、被害額は2億円にのぼっている。この件数には一般レーンの不正通行も含まれるが、同社は半数以上がETC絡みとみている。
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ETCの不正通行は、▽有効なカードを車載器に挿入しないままゲートを突破する、▽軽乗用車などの車載器を大型車が積んで通過するなどがある。ただ、手口は分かってもETC専用レーンは無人のため、不正通行車両の特定が困難というのが実情である。
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そこで、同社は04年度から料金所で通行車両すべてを監視カメラで撮影し、車載器のデータとナンバープレートを瞬時に照合するなどして不正通行車両を割り出すシステムの導入を検討し始め、実用化のめどが付いた昨年6月から試行を開始、今年4月から本格運用に踏み切った。プライバシー保護の観点から、正当な通行車両のデータはすぐに削除される。
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現在までに、同社管轄の全133ヶ所の料金所の9割以上、ETC専用レーンに限ればほぼすべてに導入された。鮮明な画像という動かぬ証拠で、これまでに警察に通報した2件で逮捕などに結びついたほか、不正通行者への請求(通常料金の3倍)で300百万円以上を徴収する成果をあげている。
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システム導入費用は約15億円だが、同社では「不正通行を見逃すことは、ちゃんと支払っている通行者に不公平感を与えてしまう。有料道路の根幹を守る必要がある」とし、「確実に特定できるので、不正通行はやめていただきたい」と呼び掛けている。
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