わが国の治安悪化の大きな要因の一つに、暴力団による犯罪、組織的な薬物・銃器の密輸・密売、来日外国人犯罪組織による犯罪などの組織を背景とする犯罪(組織犯罪)の深刻化があるが、このほど警察庁の組織犯罪対策部企画分析課がまとめた「平成18年の組織犯罪の情勢」によると、組織犯罪については、暴力団構成員と来日外国人犯罪者が連携して行われることがあり、組織犯罪を行う犯罪組織の間に結び付きが認められるとし、さらに、来日外国人犯罪組織の周辺には、不法滞在を助長するもののほか、犯行の道具・拠点を提供するいわゆる犯罪インフラが存在するとともに、暴力団といわば共生し、または暴力団を支援する者も存在するとしている。
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そして、暴力団については、資金獲得活動を不透明化することによって検挙される機会を少なくすることや短期間で多額の資金を獲得することを目的に、暴力団関係企業を不動産・証券取引に係る犯罪に関与させている。また、公共工事における受注企業などの中には、暴力団に多額の資金を提供する者も存在する。さらに、暴力団を法律上の専門知識・資格を活用して支援する者も存在するとしている。
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政府は平成18年7月に犯罪対策閣僚会議にワーキングチームを設置し、関係省庁により暴力団の資金獲得活動の巧妙化などに対する効果的な対策についての検討、協議を開始し、警察庁においても組織犯罪対策を的確に推進し良好な治安を回復するべく、所要の組織改編を行ったうえ、組織犯罪に係る情報を一元的に集約・分析し、戦略的な組織犯罪対策を推進するよう努めており、その結果、例えばマネー・ローンダリング行為などの検挙によって暴力団などの資金獲得活動の解明が進むとともに、戦略的な取締りにより、薬物密輸・密売組織や暴力団組織を弱体化・壊滅した例も生じているなどの成果が現れているとしている。
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同課がまとめた「平成18年中の来日外国人犯罪情勢」を見ると、平成18年中の来日外国人犯罪は前年より検挙件数(40,123件、前年比7,737件減)及び検挙人員(18,872人、前年比2,306人減)ともに減少した。特に、ブラジル人が検挙人員の半数を占めている窃盗犯のうちの車上ねらいの検挙件数(2,394件、前年比2,648件減)が前年より大幅に減少している。
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平成18年中の来日外国人の刑法犯の検挙人員に占める不法滞在者の比率は13.2%(8,148人中1,075人)であり、10年前と比べ13.9ポイント減少している。しかし、凶悪犯(不法滞在者の比率32.0%)及び知能犯(同41.6%)については不法滞在者の比率が特に高くなっているなど、国民に不安を与える重大な犯罪について不法滞在者の占める割合が高くなっている。不法滞在については、これを助長する各種の犯罪インフラともいえる存在があり、これに係る対策が極めて重要である。
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平成18年中の来日外国人犯罪の検挙状況を国籍・地域別にみると、中国(台湾、香港などを除く。以下同じ)が検挙件数(14,170件、来日外国人総検挙件数の35.3%)、検挙人員(6,978人、来日外国人総検挙人員の37.0%)ともに依然として高い比率を占めている。
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来日外国人犯罪組織などの動向を見ると、わが国においては中国人、ブラジル人、ロシア人、韓国人及びイラン人などの犯罪組織などが強盗、窃盗、クレジットカードの偽造・行使及び規制薬物の密売など様々な犯罪を敢行しているという。
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暴力団とこれら来日外国人犯罪組織の間には、両組織の構成員が相互に役割を分担しつつ各種の犯罪を敢行する例、来日外国人犯罪組織の活動を容認する代わりに暴力団がみかじめ料を徴収する例など、暴力団と来日外国人犯罪組織とが連携しつつ共存していこうとする状況がみられるという。
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(1)中国人犯罪組織 わが国における中国人犯罪組織は、合法・非合法を問わず、資金獲得を目的に来日した中国人のうち一部の者が犯罪を犯し、更に犯罪を効率的に行うため、それらが組織化したものが多いとみられる。これらの犯罪組織は、役割分担を明確化したうえで統制されており、中には中国本土の犯罪組織や暴力団と連携している例もみられる。
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中国人犯罪組織により敢行される犯罪の罪種は、資産家などを対象とした緊縛強盗、ピッキング、サムターン回し、ガラス破りなどによる空き巣、クレジットカードなどのデータのスキミングからカード偽造、偽造クレジットカードなどの行使まで組織的に行うカード犯罪、旅券など身分証明書の偽造及び不法就労助長事件など広範囲にわたっている。
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(2)ブラジル人犯罪組織 ブラジル人犯罪グループにより敢行される犯罪の罪種は、車上ねらい、自動車盗及び部品ねらいなどの非侵入事犯が多く、最近では、これらの犯罪に覚せい剤取締法違反(使用)などの薬物事犯が伴う例が多くなっている。ブラジル人犯罪グループは、繁華街のクラブやディスコなどにおいてメンバー同士が知り合い形成される例もあり、活動範囲は日系ブラジル人のネットワークを通じて広域に及んでいる。また、少年犯罪が多いのもブラジル人犯罪の特徴である。
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(3)ロシア人犯罪組織 ロシア人犯罪組織は、合法・非合法のビジネスを通じて海外との結び付きを強め、国際的な犯罪組織に成長したといわれており、主にロシア極東地域に拠点を持つ組織がわが国国内において直接に活動、または来日ロシア人の活動に背後で関与するなどの状況がうかがわれる。
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多くのロシア船が入港する北海道や本州の日本海側の地域では、ロシア人犯罪グループらによる自動車、船外機及びタイヤなどを対象とした窃盗事件が発生しており、中には暴力団関係者と連携して犯罪を敢行している例もみられ、複数の港から盗難車などがロシアに運ばれている状況がうかがわれる。
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(4)コロンビア人犯罪組織 コロンビア人窃盗グループは、関東や中部地方を中心として夕刻から夜にかけての時間帯に一般住宅を対象に空き巣を敢行している。
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窃盗グループメンバーは、当初から犯罪目的で、偽造旅券を使用し短期の在留許可で入国する者が多く、わが国国内において3~4人で空き巣などを敢行し、捜査が及ぶ気配を察知したり、盗んだ金品が一定の目標額に達すると帰国するヒットアンドアウェイ型の犯行形態がみられる。
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(5)韓国人すり組織 韓国人すり組織は、大ボスとされる大サジャン及びすり実行部隊の仕切役とされるサジャンで構成される上層部が支配し、実行部隊がリーダーとともに来日し、犯罪を敢行した後、素早く帰国するという典型的なヒットアンドアウェイ型の犯行を繰り返している。
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犯行グループは4~10人程度で形成されており、「見張り役」「幕役」「抜き取り役」「足止め役」など役割を分担したうえで、凶器や催涙ガスを所持し、主として女性や高齢者を狙って犯行を敢行している。また、犯行手口については、従来の「すり」から銀行で払戻しを受けて帰る途中の者などから金品を盗む「途中ねらい」やすり取ったキャッシュカードを使っての「払出盗」など多様化する傾向にある。
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(6)イラン人薬物密売組織 イラン人薬物密売組織は、首領による強い指揮統制の下、携帯電話で客との取引場所を指定し、覚せい剤を始めMDMA、コカイン及び大麻など多様な薬物を密売している。
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これら薬物密売組織については近年、首都圏や中部地方などで薬物密売に絡む他組織との抗争、組織内のトラブルなどから逮捕監禁、誘拐、殺人事件などの凶悪犯罪も敢行してきており、中には、暴力団と連携・対立している組織もみられる。
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(7)中国人などクレジットカード偽造組織 クレジットカードの偽造及びその行使を典型とするカード犯罪は、国境を跨いで犯罪が敢行されている点で国際組織犯罪の典型ともいわれており、わが国国内では中国人グループがクレジットカードの偽造に深く関与している。
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クレジットカード偽造犯罪の手口は、偽造カード作製用のプラスチック板(いわゆる生カード)の密輸、カードデータの入手、偽造カードの作製、買い子による商品の詐取、詐取商品の換金という段階に分類でき、各段階ごとに明確に役割が分担されており、一つの組織が全ての役割を担う形態や各役割ごとに複数の組織が分業化している形態がみられる。
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(8)その他特徴的動向 ○アベトナム人組織窃盗 ベトナム人による万引き事件では、個人として行われている場合のほかに近年、関東、中部、近畿等において不良ベトナム人犯罪組織が中国人故買組織などと関係を持ち、ベトナム人元研修生等を実行部隊として大型量販店などで組織的に敢行している事例もみられる。
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○イトルコ人組織窃盗(自販機ねらい) トルコ人による自販機ねらいの犯行は、短期滞在の在留資格で来日し不法残留となったトルコ人などが夜間、2~3人のグループで免許を持った同国人の運転する車両を使用し、都市部では人目に付かない裏通り、地方では幹線道路などに設置された自動販売機をバールなどで破壊し、内部に収納された現金を窃取するというもので、一度に数十件と多数連続的に敢行する例もある。犯行地域は、中部地方を中心に関東、近畿、中国地方にまで及んでいる。
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犯罪インフラの現状を見ると、不法滞在が来日外国人犯罪の温床となっているともいわれているが、地下銀行、偽装結婚、各種証明書などの偽造、不法就労助長といった不法滞在を助長する様々な犯罪インフラが存在し、来日外国人犯罪組織などが、これらの犯罪インフラをビジネスとして利用している状況がみられる。
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(1)地下銀行 地下銀行は、簡便、迅速、廉価な送金が可能なことから、わが国国内に滞在する外国人などが母国の家族などへの送金に利用している形態が一般的であり、不法就労や犯罪で得た収益を送金しようとする者にとっては、身分確認が不要で、送金目的を明かす必要のない地下銀行は、格好の送金ルートになっている。
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(2)偽装結婚 わが国に来日する外国人が偽造旅券を使うなどの危険な方法によらずに安全に入国したり、不法にわが国での長期の在留資格を得るため、日本人との結婚を偽装する形態がみられる。来日外国人が日本人との結婚を偽装するためには、婚姻相手役となる日本人の紹介や婚姻に必要となる諸手続を行う必要があり、これを請け負う偽装結婚請負組織などの存在がうかがわれる。
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(3)各種証明書等偽造 不法入国及び不法残留といった来日外国人の不法滞在を容易にするために偽造工場などで旅券、外国人登録証明書その他の各種証明書を偽造し、これを不法滞在者などに提供する偽造請負組織の存在がうかがわれる。これらの組織は、工場や風俗店などにおける不法就労をあっせんしている状況もみられ、日本に不法滞在している外国人や日本での長期滞在を希望する外国人は、偽造された旅券や外国人登録証明書を入手し、就労のための身分証などとして使用している状況がみられる。
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(4)不法就労助長 不法就労によりわが国で稼働しようとする来日外国人と安価な労働力を得たいわが国の事業者との間を、就労あっせんブローカーがつなぐという構図がうかがわれる。不法就労の来日外国人は、短期滞在、家族滞在などの就労の認められない在留資格で入国しているにもかかわらず、工場や性風俗店などで稼働している例が多くみられる。
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(5)その他の犯罪インフラ 来日外国人犯罪組織が広域・連続的に窃盗事件を敢行できる背景には、アパートや車両を非合法的にあっせんしたり、盗品の買取りなどにより犯罪組織を支援したり利用したりするグループの存在がある。
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イラン人による覚せい剤密売組織についても注射器を大量に調達し、密売組織が薬物と注射器を一緒に売却することを可能とし、末端乱用者の使用及び密売を容易にする者や携帯電話をあっせんして取引を行いやすくする者など薬物犯罪を側面から助長する者の存在が検挙事例から明らかになっている。
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検挙された者は、廃車寸前の中古車に多額のマージンを上乗せして犯罪組織に販売したり、高額のあっせん料を犯罪組織から徴収するなどしており、極めて悪質である。
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犯罪組織と共生し、または犯罪組織を支援する者の現状を見ると、最近の暴力団は多額の資金を安定的に獲得することをもくろみ、資金獲得活動を高度化させている。このような高度化された資金獲得活動の典型的なものは、名目的に暴力団組織から離脱した者、暴力団を利用しようとする者などの暴力団構成員などでない者による企業活動を装った活動を利用した資金獲得活動があるとしている。
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このような資金獲得活動の高度化の目的の1つは、景気が回復基調にあることに乗じ、活発化しつつある不動産取引や証券取引を利用するなどのことにより、短期間で多額の資金を獲得することであり、今1つは、企業活動を仮装し、資金獲得活動をいわば不透明化することにより、検挙される機会を少なくすることだという。
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このような仮装された企業活動は、暴力団関係企業(暴力団構成員が実質的にその経営に関与している企業、暴力団準構成員もしくは元暴力団構成員が経営する企業で暴力団に資金提供を行うなど暴力団の維持、もしくは運営に積極的に協力し、もしくは関与する企業または業務の遂行などにおいて積極的に暴力団を利用し暴力団の維持若しくは運営に協力している企業をいう)により、表面上は暴力団の関与を隠ぺいして行われることが多いという。
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また、暴力団関係企業以外にも暴力団に資金を提供し、または暴力団から提供を受けた資金に係る利益を暴力団に還元するなどして暴力団の資金獲得活動に協力し、または関与する者(個人・グループ)が存在し、これらの者は表面的には暴力団との関係を隠しながら、その裏で暴力団の資金獲得活動に乗じ、または暴力団の威力や影響力を利用することによって自らの利益を図っており、いわば暴力団と共生する存在となっているという。
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一方、暴力団の資金獲得活動に関し、経済活動を効率的に実施するため、あるいは違法行為の発覚・検挙を免れるため、法律面の知識や法律専門家のみが行い得る手続が必要となることがある。暴力団の周辺には法律専門家として暴 力団の資金獲得活動をいわば法律面から支援している者も存在し、これら暴力団と共生し、または暴力団を支援している者は、暴力団の資金獲得活動による健全な経済社会の侵食や法秩序の歪曲・破壊に加担する存在である。また、暴力団組織の末端における資金獲得活動ばかりでなく、組織中枢における資金力の拡大・強化に寄与していることが多いものとみられるという。暴力団対策上、これらの者に対する取組を強化し、その実態を解明し、違法行為を検挙することは不可欠のものとなっているとしている。
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わが国における来日外国人による大がかりな犯行は、犯罪の拠点となる家屋や犯行供用車両のほか、資産家などの犯行対象、付近の地理などに関する様々な情報などがなければ非常に困難である。このため来日外国人犯罪組織による強・窃盗では、日本人が資産家に関する情報提供、犯行供用車両の調達及び運行を担っている例、また、来日外国人犯罪組織による偽造クレジットカード使用詐欺では、日本人が商品の購入や詐取した商品の換金を担っている例などがみられるという。
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来日外国人犯罪組織などの犯罪に関与する日本人には、このように来日外国人犯罪組織の一員として犯罪を敢行する者の他に、来日外国人犯罪組織などの周辺で同組織などが窃取した盗品を買い取る者、イラン人薬物密売組織に薬物使用の道具となる注射器を販売する者、法律の知識や職権を悪用して不法滞在を支援している者などの存在が確認されており、これらの、いわば来日外国人犯罪組織などと共生し、または支援する者の実態を把握、分析し、対策を講ずる必要があるとしている。
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平成18年中に明らかになった来日外国人犯罪組織などと共生し、または支援する者の関与がみられた事案には次のようなものがある。 【事例1】(中国人窃盗グループの盗品を買い取る日本人の事例) 1都2府8県で発生した中国人窃盗グループによる空き巣、車上ねらい、払出盗事件について平成17年12月までに中国人及び日本人40人を検挙し、その後、中国人窃盗グループから指輪などの盗品を買い取っていた日本人1人及び中 国人2人を盗品等有償譲受けなどで検挙した。(1月警視庁、千葉、群馬、茨城、京都、兵庫、大阪)
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本例における宝石商の日本人は、中華料理店で盗品等有償譲受けで検挙された中国人女性から貴金属の購入を持ちかけられたことを契機に、中国人窃盗グループとの付き合いを始め、この中国人女性を仲介役とし、自らも中国人窃盗実行犯と接触して貴金属や高級腕時計を安価で買取り、貴金属店などに転売して利益を得ていた。
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来日外国人の窃盗組織は、盗品を国外に郵送、または国内で販売する方法で処分しているが、この事例にみられるように国内における盗品の販売処分では盗品を安価で仕入れ、転売して利益を獲得しようとする日本人と共謀していることもうかがわれ、このような、いわば来日外国人犯罪組織と共生する日本人が来日外国人犯罪組織による犯罪を助長する存在となっている。
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【事例2】(不法滞在のイラン人に賃貸住宅、携帯電話を貸与する日本人の事例) 不法滞在のイラン人に対し、営利目的を持って自己名義などで契約した賃貸住宅及び携帯電話を貸し与えていた日本人1人を出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」)違反(蔵匿)で検挙するとともに、同人が契約していた賃貸住宅に居住していた不法滞在のイラン人6人を検挙した。(2月愛知)
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本事例における不動産会社役員の日本人は、平成2年頃から不法滞在のイラン人に対し、携帯電話約1,000本を貸与するとともにイラン人約500人に賃貸住宅を又貸しし、手数料を徴収することにより約6,000万円を得たと供述しており、同人が賃貸住宅などを貸与していたイラン人の中には薬物密売に関与する者も含まれていた。
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同人は、平成2年頃から来日外国人を相手にした不動産業を始め、当初はイラン人以外の来日外国人にも賃貸住宅を貸与していたが、薬物密売に関与するイラン人は金回りが良く、契約上のトラブルから犯罪者であることが発覚すること を避けるために料金滞納もないことからイラン人を専門に商売を行うようになったことが判明している。また同人は、不法滞在のイラン人の中で顧客の情報を守り安全に住宅や携帯電話を手に入れることができる者として、その存在が知られていた。
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【事例3】(イラン人薬物密売組織に注射器を販売する日本人の事例) イラン人薬物密売組織が多数の顧客に対して覚せい剤などを密売するに当たり、覚せい剤とともに注射器を交付していることを知りながら、同組織に大量の注射器を販売していた日本人1人を国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為などの防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(以下「麻薬特例法」)違反幇助等で検挙した。(6月愛知)
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本事例におけるゴルフショップ経営者の日本人は、薬物密売に関与していた別の日本人からイラン人薬物密売組織のメンバーを紹介され、これを契機にイラン人薬物密売組織に注射器を販売するようになり、ゴルフグリップの修理に使うと偽って注射器を仕入れ、販売していたもので、検挙されるまでの約4年間に約55万本を販売し、約700万円の利益を得ていたとみられている。
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また薬物密売組織のイラン人は、覚せい剤の売れ行きが上がるように購入した注射器を無料で覚せい剤購入者に渡していた。薬物密売組織は、本事例にみられるように覚せい剤購入者が直ぐに使用できるよう覚せい剤とともに注射器を取り扱っていることが多いことから、薬物密売組織の取締りはもとより、薬物密売組織に注射器を販売し薬物密売を助長している者を取り締まり、薬物密売組織への注射器の供給を遮断することも必要である。
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【事例4】(資格外活動の中国人を幇助する日本人の事例) 「技術」の在留資格で本邦に在留している中国人に対し、引き続き同資格で本邦に在留できるようにするため、実際には整体院でマッサージ業を営んでいるにもかかわらず、経営コンサルタント会社でコンピューター情報処理業務を行っているとして内容虚偽の在職証明書を作成し、入国管理局にこれらの証明書などを添付した在留期間更新許可申請書などを提出して、在留期間更新許可を得させた行政書士ら日本人2人を入管法違反(資格外活動)幇助で検挙した。(6月警視庁)
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本事例において、在留期間更新許可を得ていた中国人は、「就学」の在留資格で本邦に入国し、長期間日本に滞在することが可能な在留資格を取得したいと考えていたところ、アルバイト先で知り合った中国人から日本人を介して検挙された日本人の行政書士を紹介され、在留資格を「就学」から「技術」に変更してもらい、その後は仲介者を介さずに直接この行政書士に依頼し、2度在留期間の更新許可を得ていたと供述している。
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行政書士は、この中国人から申請手続ごとに10万円から12万円を受け取っており、また行政書士は同人と共謀して検挙された日本人の経営コンサルト会社役員に、手続ごとに約5万円を謝礼として渡していたことが判明している。
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行政書士は、本事例の他にも経営コンサルト会社役員に依頼して虚偽の在職証明書を作成し、複数の中国人の在留資格に係る虚偽申請を行っていたものとみられ、行政書士が利益目的に法律の知識や代理申請の職権を悪用し、来日外国人の不法滞在を支援していたことがうかがわれる。
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このため同課では、来日外国人犯罪組織などの犯罪では、来日外国人犯罪組織などと関係を有する日本人が重要な役割を担っている状況がうかがわれることから、来日外国人犯罪組織などに対する対策に当たっては、来日外国人犯罪組織などはもとより、これらと共生し、または支援する日本人に対する実態把握及び取締りも重要であるとしている。
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