東海地方を中心に130店舗ほどの書店を経営している三洋堂書店(本部・名古屋市、加藤和裕社長)は万引き防止にも意欲的に取り組んでいるが、独自に始めた万引き対策が注目を集めている。独自に始めた万引き対策とは損害賠償として「万引き犯に人件費を請求」すること。その内容とは-。
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万引き犯に請求する人件費とは、万引き犯に対して、事件を処理した従業員、警備員のそれぞれの時間給を掛けた人件費で、これを実費請求している。時間については、不審なお客を監視し始めてから警察に引き渡すまでか、被害届けの提出まで。警察が調書を作成すると、5時間以上の拘束になることもあるといい、請求額の平均は約6,060円。万引きされた商品は買取せず、返品させていて、請求額には含めないという。昨年8月の開始以来、費用の回収率は80%にのぼるという。
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この“人件費請求作戦”を思いついたヒントは、一昨年、東京都内の書店が、書籍を万引きして有罪となった女性に、監視のために増員した店員の日当と、警察の事情聴取に要した店員の時間給を支払えと訴訟を起こし、女性が約7万円ほどの賠償金を支払うことで示談が成立したことにあった。
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同書店では、損害賠償を請求する旨の告知は店内にポスターを掲示して行っている。実際の請求は、万引きがあってから1週間以内に、請求書を本人か保護者宛に発送する。支払いがなければ、簡易書留、内容証明郵便と、段階的に証明力を増す様式で、計4回請求する。1回目の請求で振り込まれるのが68%。請求書が届いているのに入金しない人はわずか3%だった。昨年8月から今年9月までに延べ61人に請求し、計約28万円が振り込まれたという。
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同書店の全店舗で捕捉した万引き犯は、04年4~9月が75人だったが、この“人件費請求作戦”始めた05年同期は46人、06年同期は36人と減少しており、万引きの抑止にかなりの成果を挙げている。
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愛知県警の防犯担当者は「債権者である書店が人件費を請求するのは問題ない。ただ脅迫めいた請求にならないよう、手段や方法に十分する必要がある」としている。
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