松下電工は、業界で初めて屋外の太陽光下でも高い認証率が確保できる「顔認証技術」を開発した。この技術は、独自開発の光変調アクティブカメラにより太陽光や照明の明るさ、ムラなどに全く影響されず、顔認証を可能にするもの。 |
これまで光による制約条件で限定的にしか用いられてこなかった顔認証が、この技術によりオフィスビルの出入口の入退室管理、マンションの顔認証と連動したオートロック開閉システムや、精度の高い顔認識が必要とされるコンピューターサーバーの入退室管理システムなどに幅広く採用されるものと考えられる。 |
新たに開発した光変調アクティブカメラは、周囲の光と内蔵LEDから顔に照射して戻ってくる変調光を区別し、変調光だけの顔画像を出力することができる。これにより、暗闇(0ルクス)から太陽光下(10万ルクス)まで顔認証が可能となった。 |
同社では、この技術を応用したマンションのエントランスやオフィスビルの出入口などでの顔認証装置として今後商品化を図ることにしている。また、光変調アクティブカメラの小型化と認証部のIC化を図り、住宅向けテレビモニター付インターホンなどへの展開も順次行っていく予定である。 |
特長は次のとおり。 |
(1)独自開発の光変調アクティブカメラにより、暗闇(0ルクス)から太陽光下(10万ルクス)においても業界最高水準の認証精度を得、太陽光や照明の明るさ、ムラの影響を全く受けず、設置場所を選ばない認証が可能。 |
(2)高いセキュリティ・利便性 |
人体の一部である「顔」を鍵として使用するため、キーやカードのように貸し借りやコピーが不可能であり、極めて信頼性の高い顔認証装置の実現が可能。また、非接触のためハンズフリーでの認証が可能。 |
本製品の基本技術は次のとおり。 |
(1)光変調アクティブカメラで周囲の光の影響を受けない安定した画像を出力 |
基本原理は、カメラから対象物に高速変調したLED光を照射し、人物などに反射して戻ってくる反射光から周囲の光の影響を取り除き、LED変調光(※1)の振幅のみを取り出す同期検波方式を採用。従来この方式は、FA用の光電スイッチなど(※2)一つの受光素子を持つシステムでは実用化されていたが、既存の2次元撮像素子においては実現不可能だった。そこで同社では、独自の特殊CCDを開発し、各画素ごとの検波を可能にする同期検波制御方式(※3)を開発することで2次元撮像素子を用いた同期検波の実現に成功した。 |
今回開発した特殊CCD撮像素子は、663万画素(水平256×垂直246)の各画素ごとに10MHzのLED変調光のみを取り出し、周囲光を完全に除去できるので、暗闇(0ルクス)から太陽光下(10万ルクス)まで周囲光の影響を全く受けない安定した画像を出力することができる。 |
※1 LED変調光 : LED(発光ダイオード)を一定周波数のパルス駆動や一定周波数の交流駆動をさせることで、LEDの発光波形が正弦波形やパルス波形列となる光 |
※2 光電スイッチ : 物体に光をあて、その反射光あるいは透過光を検出してオンオフするスイッチ |
※3 同期検波方式 : 自己発光周期に同期して信号光を検出する方式 |
(2)同社独自開発による顔認証方式 |
同社独自の顔認証方式は、入力された画像から認証に有効である顔の特定領域を顔情報として抽出し、予め登録している顔情報と照合するもので、顔の傾きや大きさ、髪型の変化に対して高い認証精度を実現している。この顔情報は、個人の特徴がでやすい目鼻立ち、口元の特定領域を抽出することにより認証精度を高めている。 |
また、登録した顔情報および顔画像の履歴などの個人情報は、特殊な暗号化処理で変換し、保存・運用することにより、個人情報の保護を確保している。 |
主な仕様は次のとおり。 |
▽使用周囲照度:0 ~10万ルクス |
▽認証距離:30 ~ 50 cm |
▽照合時間(1:1認証):1秒以下 |
〔カメラ部〕 |
▽電源:DC12V |
▽信号方式:NTSC 出力 |
▽有効画素数:663万画素(水平256×垂直246) |
▽応答速度:11フレーム/秒 |
▽画角:水平80°×垂直 60° |
▽外形:縦60×横150×奥行き80mm |
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