NECは22日、顔の立体的データを元に本人であることを照合する3次元顔照合において、世界最高性能の顔照合アルゴリズムの開発に成功したと発表した。今回開発した3次元顔照合アルゴリズムは、3次元顔データから任意の姿勢・照明変動を効率的に記述することが可能なGIB記述子(注1)を生成し、登録データとして利用することによって実用場面で現れるような様々な条件で高い精度を達成している。 |
特長は次のとおり。 |
(1) 目や鼻、口、頬などの部位の、顔照合精度における重要度を汎的顔重み付けマップとして開発(注2)、更に比較のためGIB記述子から生成した画像の鮮明度により類似度を再計算する照合アルゴリズムを新たに開発し、照合精度を当社従来比約24倍に向上(注3)。 |
(2) 顔画像と3次元顔モデルを比較する際に、顔の姿勢の差異を高速に計算するIOF法(注4)により、照合速度を同社従来比約3倍に高速化。 |
今回の開発により、1,000名の登録3次元顔データの中から、顔の姿勢や照明環境が大幅に変動する厳しい条件下でも本人を照合できる確率が96.5%(注5)という世界最高の照合精度を実現したという。 |
テロなどへの社会不安が強まる中、世界的にバイオメトリクスによる人物照合技術への注目が集まっているが、現在、指紋認証と並んで有力な認証方法として研究が進められている顔照合は、事前に2次元の顔画像データを登録し、そのデータとカメラに写った2次元画像とを照合する手法が主流となっている。しかし、2次元画像による顔照合は、カメラに写る顔の姿勢や照明条件などが登録画像から外れることで大きく照合精度を落としてしまうという問題点がある。そのため、姿勢や照明の変化によらず、高い照合精度を実現できる技術の開発が求められていた。 |
NECではかねてから、これらの問題を解決するため、3次元の顔データを登録し、顔の姿勢や照明条件などを内部的にシミュレートすることで横顔や逆光でも照合もの。 |
NECでは、今回の3次元顔照合アルゴリズムの開発が、屋外を含めた多様な実環境でも使用可能な顔照合システムの実現を加速するものと考え、今後、表情の変動やサングラスなどにも対応可能な、実利用環境により合致したアルゴリズムの開発を進めていく計画である。 |
(注1)GIBとは、測地照明基底(Geodesic Illumination Basis)と名付けた、顔表皮各位置における、照明変動の記述子。 |
(注2)新開発の汎的顔重み付けマップに基づき、顔の各部位の重要性に応じて重み付けし、本人らしさを計算する手法(wGIB法)。 |
(注3)平成13年時点にて達成した42名での一位照合率96.1%(1/42への絞り込み)から、本発表では1,000名での一位照合率96.5%(1/1,000への絞り込み)と、絞り込み性能を約24倍向上した。 |
(注4)IOF法とは、仮想オプティカルフロー(Ideal Optical Flow)と名付けた、画像と3次元モデルとの間における移動量を推定する手法。 |
(注5) 性能の実証は同社で収集した1,000名の人物から構成されるデータベースを利用した。1,000名登録3次元顔データに対し、正面から大幅にずれた姿勢(最大約90度)や、大きく偏った照明などを含む多様な顔画像計72,000枚(一人あたり72枚)により照合実験を行い、正しく本人が一位となる確率、96.5%を得た。 |